2009年08月17日

8/12日記(歌舞伎座「怪談乳房榎」「豊志賀の死」感想)

Pop is dead.■8/12
・昼、嫁と室町砂場へ。都合により、ちょうど12時頃になってしまい、会社員の昼食時とぶつかる。
・軽く飲み、ざる一枚。こういう時間帯だとさすがに注文の通りも悪く、表面の乾いた蕎麦が出てきた。
・やはり蕎麦屋というのは、2時過ぎに行かねばならぬ。

・神田から東銀座へ移動、歌舞伎座の「真景累ヶ淵-豊志賀の死(しんけいかさねがふち-とよしがのし)」を幕見で見るため。開幕一時間ほど前に着いたが、既に長い列が出来ている。幕見ってこんなに混んでるものだったか?
・あいかわらず、行列の監視・整理をしている松竹社員の冷徹さが良い。あのおじさんはある意味、歌舞伎座名物だと思う。
・並んだ甲斐あって座れた。外国人が多く、夏休みだということで学生連れの先生もいる模様。

・実は「豊志賀」を見るのはこれが初めて。というか三遊亭圓朝原作の歌舞伎自体、そういえば見たことがない。
・今回、豊志賀を福助(昔の児太郎)が演じている。この人、良い役者だが鼻にかかった特徴のある声のため、どうも台詞が喜劇調になる。「豊志賀の死」というのは。女の嫉妬心がつのり、死して幽霊となる、という恐い話です。だから、前半で豊志賀が語る嫉妬心、恋人・新吉への執着心みたいなものはとても重要になるのですね。それを、福助がやるとどうしても「お笑い」になってしまう。客席も笑っていて、新吉役の勘太郎含め、演者もコメディーとして演じている。
・こういうのを見ていて、僕は「違うなあ」と思う。僕は三遊亭圓生の、つまり正統の「真景累ヶ淵」を聴いていて、それをベースに見てしまうから、どうしても「違うなあ」と思わざるを得ない。これでは怪談として成立していないぞ、と。
・演出上の問題として、豊志賀というのはもともと大変な美人で、その顔が崩れて嫉妬の鬼となる、というのが怪談の芯の部分になるわけです。そこの所を、今の客は知らないので、なんらか説明が要るのではないかと思う。
・あと、豊志賀の幽霊が着ぶくれていてなんとも不格好である。着物の裾をズルズル引きずってね。あんなもの、恐くもなんともない。もう少し工夫するべきだ。
・てなわけで駄目でしたね。この演目は、芝居として非常に大きな欠陥を持ってると思いますよ、正直言って。

・その後、夜の部までの時間を銀座で潰す。

・夜の部のメインは「怪談乳房榎(かいだんちぶさえのき)」。これまた圓朝作品。
・それに先んじて演じられたのが谷崎潤一郎原作の「お国と五平」。これは谷崎らしいというか、どうも変態的な香りの芝居で、まあ面白いと言えば面白い、という物。ただしこれは歌舞伎というより新派・新劇に属するような物で、個人的には全く好きではない。

・そして「乳房榎」。結論から言うと「非常に良い、初心者向けの演目」という印象。分かりやすいストーリー、テンポの良い進行、勘三郎の早替わり、舞台に本物の「滝」が出てくる仕掛けなど、これは初心者が見て十分面白い芝居だと思う。
・この芝居では福助も良いし、勘三郎のハリキリも、良い方向に作用している。
・ただ、この話を二時間に収めるために、本を徹底的に端折っているのではないか。悪役・磯貝浪江の口説きや脅しや、菱川重信殺しの場面など、もっと丁寧に描かないと圓朝噺らしくない。エンターテインメントとしては素晴らしいが、どうも原作を尊重していない印象は拭えない。せめて、磯貝浪江のねちっこさや狡猾さ、卑怯さをもう少しでも描いて欲しかったな。あの演出では、ただ刀に物を言わす暴れん坊だもの。
・しかし、まずこの芝居なら誰にでも楽しめるだろう、と思うので大お薦めではある。幕見なら全部見ても1200円

・あとやっぱり文句を言いたいのは、勘三郎の早替わりって、そのタネは20年以上前の猿之助なわけですよ。勘三郎(当時 勘九郎)が猿之助をどう思っていたのか知らないが、あの頃「正統な歌舞伎界」は猿之助を疎み、差別していたと思う。あの、なんとなくいやな感じを経て今、勘三郎がこういうケレンで支持を得ていたりするのって、どうも割り切れない感じがする。なんとなーく、猿之助って結局貧乏くじを引いちゃったんじゃないかとか。
・いや、ああいうケレンは楽しいし、客の裾野を広げるという意味では歓迎するんだけど、なんかスッキリしない物が残るのですね。

・山の上ホテルに宿泊。くつろぎ感は奈良ホテルに及ばないが、都心にこういうホテルがあるというのは、東京もまだ捨てた物じゃないというか、東京はまだ「ガキジャリだけのための町」にはなっていないなあ、という感じ。

圓生百席(48)乳房榎 前/後 -三遊亭圓生
百席(48)乳房榎
この記事へのコメント
 猿之助は、「梨園の中で自分は異端だ」と思っていたから、猿之助一派を作り、ああいう方向に走ったのではないのかな、と私は思ってます。
 ちなみに、私は猿之助の演技は好きではありませんでしたが、ケレンは大好きでした。7月は必ず歌舞伎座に観にいってましたわ。
 勘三郎は面白いと思うことだったらなんでも取り入れちゃう人なので、許してやっていただけませんか?
Posted by ひげめがね at 2009年08月20日 23:04
■ひげめがねさん
 なんか政治力の違いが評価につながるってのがね、そりゃ必然だけど、両方の役者を見てると、なんかひっかかるわけですよ。
Posted by LSTY at 2009年09月30日 20:32
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