2012年03月15日

3/14日記(伊丹十三幻の作品「ゴムデッポウ」感想)

Pop is dead.・元同僚の送別会というか、飲みに行く。
・餞別としてLAMYのアルスターを贈る。万年筆は使ったことがないと言うが、ペンの持ち方も全くダメで、そうか、万年筆を使ったことがない人間というのはこういう人間なのか、と思った。
・つまり、卵を見たこともない人間に対して、生卵の割り方を教えるようなものだ。

・ついでなので、一通り所有万年筆の自慢をする。今日届いたばかりのシェーファー・スノーケルも見せる。
・帰ってスノーケルの試し書き。実に素晴らしい書き味。所有万年筆中、最高ではないか。
・吸入機構のテストは未実施。ジャンク品として購入したもののため、おそらくオーバーホールが必要だろう。

・注文していた快楽亭ブラックのDVD届く。Amazonでは中古品が随分廉く売られている。500円程度。

・さて、急に、伊丹十三の短篇「ゴムデッポウ」の感想を書いていないと気付いた。
・今まで幻とされていた伊丹十三の初監督映画。上映会が小規模に行われた程度でDVDにもなっていないし、まさに伊丹サーティーンファンにとって「見たくても見られない映画」だった。
・それが、伊丹作品ブルーレイ化に伴い特典映像として収録されたのです。商売の仕方としては汚いが、しかし余程の伊丹ファンじゃなければ知らないし探してないだろう。僕としては、たとえ2万円のボックスの特典だろうが、既にDVD持ってるのを買い直さなきゃいけないとしても、嬉しかった。

・一言で言うと、フィルム・ノワールってやつ?空気感が「死刑台のエレベーター」みたいだと思った。あ、ちなみにモノクロね。
・あ、違った。「死刑台のエレベーター」はヌーヴェルヴァーグか。
・「タンポポ」以降の伊丹映画とは全く違う。つまりエンターテインメント要素はなし。
・醜悪な東京の中で、つまらない日常に腐る若者達。一言で言うとスノッブ。いやな感じ。倦怠感、諦念、無理矢理の強がり、後味の悪いブラックジョーク。そういうもので埋め尽くされている。

・これ、実に伊丹十三的なんですね。映画しか見てない人には分からないと思うんだけど、彼の著作「ヨーロッパ退屈日記」や「女たちよ!」あるいは「日本世間噺大系」などを読むと、伊丹十三という人がいかに批判的でイヤミな人物か分かる。僕はそのイヤミさが好きで、憧れているわけだけど。
・伊丹十三の厭世的な態度、選民主義的な思想、イヤミな金銭感覚が表出した映画。彼が自分のイヤな部分を敢えて描いたんじゃないか、と言うような。
・僕は今まで、伊丹十三は、自身がイヤミだなんて思っていなくて、自信を持って、正しいと思ってそういう風に生きてるんじゃないかと思っていたが、しかしこの映画を見て、彼自身が彼の醜さに気付き、あるいはそこに悩んでいたんじゃないか、と思えてきた。

・黒澤明「まあだだよ」は、内田百間を描いた美しい映画なんだけど、同じ百間先生を描いた映画「ツィゴイネルワイゼン」(鈴木清順)は、たまらなく陰鬱な作品。
・前者は百間先生の明るい面を描いていて、後者は陰の部分を表現している。百間先生としては撮って欲しくない映画だったと思う。
・伊丹十三の「タンポポ」以降の作品は、彼の陽の部分が出た映画。「ゴムデッポウ」は、伊丹版「ツィゴイネルワイゼン」じゃないのかね。自分の陰の部分、描いて欲しくない部分を、自分であえて撮っちゃった、という。
・こういう、自分自身に対してもドライな、突き放した態度というのは、彼の自殺につながるのかなあ、と考えてしまった。今まで「伊丹十三は自殺するような人では無かろう」と思っていたが、この映画を見ると、ちょっと考え方が変わる。

・映画として面白いかどうかは微妙。駄作ではないが、このために2万円使うことをお勧めはしない。しかし、伊丹ファンであれば、見て損はないと思う。BOXの内容としては「あげまん」は駄作の部類に入るだろうが、それ以外は良作。時系列に収録してるから仕方ないんだろうけど、「あげまん」の代わりに「ミンボーの女」が入ってれば最高だったけどね。

・「タンポポ以降」と書いたのは、「お葬式」はちょっと毛色が違う、と思ったから。宮本信子と尾藤イサオが「東京だよおっ母さん」を歌う前後のシーンなど、その後の伊丹作品では無い演出だと思う。「タンポポ」以降の伊丹作品では、登場人物は全員マンガ化され、キャラクターを誇張して描かれるんだけど、「お葬式」では人間の描き方が違う。

伊丹十三 FILM COLLECTION Blu-ray BOX T
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