2012年08月06日

8/3-5日記(志ん朝「もう半分」・日本美術応援団@東博・杉浦茂展)

Pop is dead.■8/3
・思い立って東京へ。その動機は「生きている赤瀬川原平を見る最後の機会かも?」という思い。

・電車の中で志ん朝師匠の大須演芸場BOXより「もう半分」を聴く。この噺、志ん生師匠も良いし、怪談話なので馬生師匠もひどく良い。これは志ん朝向きの話ではないと期待せずに聴いてみたが、滅法良くて驚いた。
・大須BOXに収録されている高座は、全体的に出来が悪い。飽くまでもコレクター向けのリリースだと思うが、いくつか出来の良いものも入っていて、その中でも「もう半分」は素晴らしかった。
・志ん朝師匠は酒屋のおかみさんの描写を書き込んでいて、そこで話をふくらませ、また事件の必然性を演出している。八百屋のおじいさんの必死さもすごいし、それに対するおかみさんの無情さ、冷酷さ、すごい話に仕上がっている。酒屋の主人も良い。彦六師匠「生きている小平次」のラストシーンを思い出した。

・古今亭の芸というのは、一旦、志ん朝師匠が完成させたんだなあ、という事を強く感じる話だった。志ん生師匠が得意としていた話を洗練し、ある理想的なテキストを作り上げたのが志ん朝師匠だと思う。その典型が「柳田格之進」だ。古今亭の家の芸なのに、志ん生版も馬生版も、どうも散漫だ。それを志ん朝師匠が「ザッツ・人情噺」というカッチリした大傑作に仕上げてしまったわけだ。
・志ん生の芸を受け継ぎながら、それを改良・改造しまくったのが志ん朝師匠の仕事で、これは圓生師匠と並ぶ仕事として(演者としてだけでなく作家として)後世に評価されるべき物である。

・そういう改良・改造の度合いが強いのが「柳田格之進」と「もう半分」もそうだし、それに「お直し」なんじゃないかと思う。「お直し」も随分ドラマチックな話になっていた、ように思う。
・ように思うって書いたのは、あんまり聴いてないのね。正直に言うと、好きじゃない。すごい、志ん朝師匠の大仕事で、もちろん話もうまいが、好きじゃない。つまり、志ん朝師匠が手を入れた事で「お直し」が大ネタになっちゃってるのね。あれは志ん生師匠のようにサラッと演るべき演目だと思う。
・一言で言うと志ん朝版「お直し」は重い。「松葉屋瀬川」や「紺屋高尾」じゃないんだから、「お直し」はもっと軽くやるべきじゃないか、と思うわけです。

・話が大脱線した。偶然廉かった東銀座の「なんちゃらマリオット」に22時過ぎにチェックインし、久しぶりに銀座Sを訪れる。
・まず西瓜のソルティードッグ。このバーには馬刺しがあって、それを炙りにしてもらったのをつまみに、ドライシェリー、バンブー、ギブスン。馬刺しもうまかったが、バンブーがうまかった。ベルモットが違うのか、若干スパイシーな味わい。ギブスンは、パールオニオンの酢が強すぎてむせる。
・これでお勘定が1万円弱。都内の普通のバー、例えばホテルのバーで飲む場合の三割増程度の感覚。銀座のバーではこんな物か。

・ホテルへの帰途、建設中の歌舞伎座を見に行く。後ろに松竹本社ビルを建てていて、それがあまりにデカいので歌舞伎座がオモチャに見える。歌舞伎座って大きい印象だったけど、これからはイメージ変わるなあ。
・トイレに行きたくなったので隣の富士そばに入るが、トイレは無い(夜は閉まる)らしい。なんだよ、と思いながら春菊天そばを食べる。東海林さだおが誉めてたけど、うまい物ではない。
・帰ってホテルでタモリ倶楽部を見てから就寝。

■8/4
・6時頃起きる。旅に出た時には、まず深酒を避け、そして窓のカーテンを開けて寝れば、夜明けとともに起きられる。
・7時前にチェックアウトし、東銀座からお茶の水まで歩く。目当ては山の上ホテルの朝食。何度か泊まって朝食を食べ「山の上ホテルの洋朝食は不味い」という結論に至ったので、今回は初めて和朝食を食べてみようと思う。
・今まで行幸通り(ぎょうこうどおり)という道路の存在を知らなかった。皇居から東京駅に至る道。近所の交番にいた警官に訊くと、これは皇室行事用の道で、普段は閉鎖されているようだ。しかしこれに何故今まで気付かなかったんだろう。最近整備されて、以前はただの道路だったんだろうか。(Wikipediaを見ると、普段は歩道として解放されている、とあるが封鎖されているように見えた)
・将門公にお参りして神保町、山の上ホテルへ。

・結論としては「洋朝食よりはずっと良いが、やっぱりホテルの朝食は高い」ということで、たしか払った金額は2600円くらいだったかと思うけど、やっぱり高いよね、ちゃんとしたホテルの朝食としては妥当だと思うものの、僕としては1800円くらいが良いなあ。
・料理は味・量ともに十分。朝食としては随分量が多いので、起き抜けにあれを食べるのは大変だ。歩いてきて良かった。魚が美味しかったが、あれは何だったんだろう。小さな鯵の一夜干しだろうか、小さな魚で身は白いが、鯵のような味と脂があった。一杯目の御飯が少なかったのでお代わりしたらそれが思いのほか多く、食べきるのに苦労した。

・新御茶ノ水から電車に乗って根津に着き、そこから歩いて東京国立博物館(東博)へ。ちょうど9時ピッタリに着き、自分の時間管理の素晴らしさに惚れ惚れしたが、開館は9時半であった。ダメじゃん。9時半に開門、講演会の整理券を受け取って、常設展をざっと見る。
・備前長船の刀剣など、刃紋がいかにも不吉で良い。平安期の太刀は細身で、時代が下ると太く男らしくなるが、いずれも美しい。
・岸駒「虎に波図屏風」が良かった。岸駒の絵は一見するとヤンキー調のあまり品のない絵なんだけど、近くに寄ってその筆致を見るとアブストラクトそのもの。繊細にして乱暴というか、なんだかよく分からない線の絡み合いが集まって具象画になってる、という不思議。岸派の祖、みたいなことが書いてあったので、岸岱の師匠に当たる人なのかな。
・あと仏像では浄瑠璃寺の広目天、この仏像は出来は悪いが保存状態が最高で、衣装に描かれた文様まではっきり見える。持ってきた双眼鏡で細部まで見られた。博物館には双眼鏡持っていった方が良い、と気付く。

・いったん東博を出て上野の町に降り、池の端藪へ。開店少し前に着くがなんと店はガラガラ。暑いのでとりあえずビール小瓶。そばなえ(蕎麦のスプラウトです)をあつらえて冷や酒、そして蕎麦。以前は気付かなかったが、つなぎが特殊なのか不思議な噛み心地である。言うなればしらたきのような弾力がある。
・蕎麦はうまいが、この店、以前もそうだが常連面をした客が多く、その振る舞いが傍若無人で不愉快だ。蕎麦屋というのは格が高い割に値段が廉いので、悪い客もどんどん増えてしまうわけだ。並木藪なんかにも、厄介な客が多い印象がある。

・再び東博へ。doggylifeさんと落ち合い、赤瀬川原平・南伸坊・山下裕二の鼎談「日本美術応援団、東博を応援する」を聴く。赤瀬川原平は車椅子だが元気そう。最近は入退院を繰り返しているようだったので先が短いのかと思ったが、あれならまだ5年はカタい。南伸坊ももう65歳か、しかしこの人も元気そう、つーか声がデカい!
・内容は普通だった。ほぼ山下裕二の東博スライドショーだったが、これはあんまり面白くない。赤瀬川原平・南伸坊の話も、昔っから言っている「美術館は駆け足で回って、印象に残った絵をもう一度見ろ」とか「絵の横に貼ってある解説文なんか読むなよ」とかいう感じで、今の僕にとっては常識みたいな内容。
・山下裕二が紹介してた「納涼図屏風」が良かった。午前中、見逃してた!というか岸駒の虎に圧倒されて、同じ部屋にあったこの絵は見てなかった。
・ちなみに会場はカルチャークラブ系ジジババ中心で、サブカル少なめ。開演前、後ろに座ってた熟年カップルみたいなのがつまらない駄洒落を連発してたのと、前に座ってた爺さんが公演中常に大きく頷いていたのが印象的。更にこの爺さん、開演前に係員に「関係者席には本当に関係者が来るのか、来なければ座っても良いのか」と詰め寄り、他の客から「黙って早く座れ!」と怒鳴りつけられてた。なんなんだアレは。

・その後、森下文化センター「杉浦茂のとと?展」へ。杉浦茂には興味がないと言うdoggyさんにも付き合っていただく。無数の漫画家・文化人による杉浦トリビュートイラストに圧倒される。印象的だったのは、ひさうちみちおと呉智英。
・原画も展示してあるんだけど、なんと修正(ホワイト)が一切入ってない完璧な原画。何十枚も展示されている中で、僕が見た限りでは修正はゼロ。すごいけど、これでは印刷された物と同じなわけで、原画の味みたいなのもない。
・いくつか気になるグッズもあったが売り切れのため入手できず。

・その後、門前仲町へ移動し、薩摩おごじょ家で飲む。鶏刺し、ガツ刺しがうまい。しばらくして元同僚も合流し、BigHornに移動して9時半頃まで。
・二人と別れ、ホテルにチェックインし、門前仲町オーパへ。ここも久しぶりだが、ベリーニを頼んだら酸っぺえ変な飲み物が出てきた。恐らく、桃の果汁だけでなくプラムなど混ぜているんじゃないか。そういう変な遊びは要らない。スタンダードなカクテルをスタンダードに作れないような店に用はないので、一杯で帰る。
・しめにとんこつラーメンを食べるが、プラスチックのレンゲにプラスチックの皿、最後の最後で興を削がれた。

■8/5
・5時過ぎに目覚める。昨日は結構飲んだが平気。実は現代美術館の特撮展に行こうと思っていたのだが、どうも混んでいるようなので止めて、家に帰る。
・家に帰り、届いた「新英名二十八衆句」をざっと眺めたあと海などに出かけ、夕刻フェリーニの「道化師」を途中まで見る。この映画は良いね、やっぱり。新しく買った財布に馬油を塗り、使う準備。
・夜、嫁が留守のため近所の「カフェ」に出かけて「ショージ君の弁当箱」を読みながら一杯飲みながら夕食。

↓ジャケが良いので今回は大きい画像を。
日本美術応援団 (ちくま文庫)
posted by LSTY | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク
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