2012年11月07日

11/2-6日記(スヰートポーヅ・天竺徳兵衛新噺・浮世柄比翼稲妻・タキモト焚き火)

Pop is dead.■11/2(金)
・夜移動。ホテルに入り、飯田橋の焼鳥屋「ブロシェット」へ。
・店員がフランス人ばかりの焼鳥屋として先日テレビで紹介された店。やはり人気で満席だが、他に行く当てもなく、周囲の店もどんどん閉まってゆくので空席を待つ。
・つくね、せせり、手羽先、ホワイトアスパラ、皮、レバー、かしわ。つくねがうまいが、他はどうということなし。レバー、かしわはまあまあ。
・最後に雑炊が出るが、これは雑炊ではなく「鶏スープを使った玉子御飯」。これはこれで面白いとは思うが、雑炊ではない。
・グラスワインの盛りが甚だ良い。

■11/3(土)
・朝、根津・鷹匠へ。お通しで燗酒を1合と、せいろ1枚。ガキの客が店の表で喧嘩して警察沙汰になっていた。ガキの来る店じゃないよ、ここは。ついでに、朝のこの店というのは、子供を連れてくるような空間でもないと思う。

・地図を見ていて気になる道があったので寄ってみる。Googleマップで見ると森谷歯科医院という病院から千駄木駅の方へ北上する道だが、妙に蛇行している。切り通しのように、自然の地形によってそういう道になっているのかと歩いてみたが、そういうわけではなく、平地だった。なんでああいう曲がりくねり方をしたのか、謎である。
 追記:この道は通称「へび道」と言われる有名な道で、藍染川が暗渠化された道らしいです。
・団子坂を途中まで登り、根津に戻って「真景累ヶ淵」の舞台となった七軒町に寄り、根津駅から新御茶ノ水へ。

・お茶の水にて知人と合流し、喫茶店で時間を潰してからスヰートポーヅで食事。ビール中瓶2本、大皿(16個)、水餃子。
・スヰートポーヅは開店前から行列で、ゆっくり出来る雰囲気ではない。あんなもの、スナック的にペロペロッと食べる物で、並んで食うもんじゃねえよ。
・さてここの餃子だが、肉の切り方に特徴があるのだと思う。ミンチではなく、包丁で粗くみじん切りにした豚肉に白菜、葱(白い部分)は少し入れるかも知れないが、大蒜は入れない。つなぎはなんだろうか、片栗粉だろうか。それを皮に包むが、全て閉じず、皮をたたんだ時に付く頂点というか、そこだけ閉じて、横は開いたまま。これを多めの油で焼く。もしかしたら、いったん蒸して火を通してから、油だけで(水を加えずに)焼くのかも知れない。このような製法で、家庭でも模せるのではないか、と考える。

・そこから歩いて日本橋、銀座方面へ。丸善、明治屋、鳩居堂などを覗く。黒七味が欲しくて、扱いがあるという松屋に寄るが、今はもう扱っていないとのこと。「隣の三越さんではまだ売ってます」と教えてもらう。こういうのは素晴らしいですね。ライバルの店でも客が探してたら教えてあげるという。偉いぞ松屋。
・というわけで三越で黒七味を購入。
・夕食まで時間があるので、ブラック師匠おすすめのよもだそばで春菊天そば。そんなに言うほどでもない。カレーがうまそう。今度来たら、蕎麦じゃなくてカレー食べよう。

・知人と別れ、人形町より明治座へ。歌舞伎「天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえ いまようばなし)」を見る。今回は2等・3等席が手に入らなかったので快楽亭ブラック師匠に口を聞いてもらい、1等席を手配いただく。最前列のほぼ真ん中という特等席であった。
・巨大なガマ蛙、早替わり、つづら抜け、宙乗りなどエンターテインメントとして素晴らしい作品で、こういう芝居こそ初心者に見て欲しい。文科省には「勧進帳」や「道成寺」や「暫」が歌舞伎だっていう教育=営業妨害をやめてほしい。あんなもの見たって面白くないんだから。
・早替わりは体力に任せた荒技で、これは若いうちしか出来まい。ただテクニカルな早替わりが少なかったのは少し残念。「伊達の十役」における傘とむしろの早替わりのごとき、手品のような変身も見たい。
・小幡小平次の妹、おまき役を演じた中村米吉がかわいい。歌舞伎の女形で、あんなに可愛いと思った役者は居ない。以前歌舞伎座で見た「籠釣瓶」で、新造役?で出ていた役者で一人きれいなのが居たが、米吉の可愛さは別格。おまき目当てにもう一度来ようかと思ったほど。
・しかし今回は新・猿之助の気合いに圧倒された。見得を切る時のうなり声、腹に力を入れる「うっ」という息づかいが間近に聞こえる。いわゆる「型」を形通りになぞるのではなく、全身で必死に演じているのが分かる。最前列で見た所為もあろうが、初めて役者の気力に圧倒された。あれはすごい役者ですよ。

・ブラック師匠は、宙乗りは3階席で見ろと言っていたけど、1階席から見る宙乗りというのも感動的だ。1階から後ろを見ると、2階・3階の客が興奮している様子がよく分かる。後ろの席の人とか立ち上がっちゃって万雷の拍手。その観客を見ていると泣けてきてしまった。
・ケレンと馬鹿にされ、冷遇されてきた猿之助(猿翁)の芝居。しかし猿翁のやってきたことは間違っていなかった。これだけ観客を熱狂させ、また現在の歌舞伎を興行的に支えているものは、猿翁が築き上げたエンターテインメントとしての歌舞伎である。長らく正当に評価されず、今やしゃべるのも大変なほど病に冒され、老いてしまった猿之助(猿翁)だが、現在これだけの観衆を歓喜させ、支持されている。そう考えながら2階・3階の客を見ていたら本当に泣き出しそうになった。芝居を見てこんな気分になったのは初めてだ。
大詰めには猿翁も並ぶ。テレビで「楼門五三桐」見た時には随分痛々しくて「こんな病気の老人を舞台に出すのは残酷だ」と思ったが、あの時よりはしっかりしていて驚いた。芸に対する執念が、猿翁を回復に導いているのだろうか。猿翁にも猿之助にも、芸に対する強烈な執着心、鬼気のような物を感じる。何か大変な物を見てしまったような気分。

・終演後、門前仲町BigHornにてdoggylifeさんと飲む。

■11/4(日)
・朝、水道橋の嵯峨谷にてかけそば。ここもブラック師匠のお薦め(師匠が行ったのは渋谷だが)注文してから蕎麦を作る(押し出し型のパスタマシーンから麺をひねりだす)方式である。まあまあ。ざるそばが人気らしいので、今度来たらざるにしてみよう。

・それから新宿に向かい「タキモトの世界」でおなじみ滝本淳助さん主催の焚き火大会に参加。都区内では焚き火の出来る場所がないということで、新宿から1時間半ほど電車に乗り、奥多摩の手前のキャンプ場に旅する。
・車中、タキモトさんとスヰートポーヅの話。並んでまで食うもんじゃねえって事から始まり、あそこの餃子は出てきたらすぐに食べられるように店の奥で冷ましてるんじゃないかとか。タキモトが猫舌なのは知っていたが「じゃあ、御飯はどれくらいが適温なんですか?」と訊くと「20何度」って答えが返ってきて驚いた。つまり、冷や飯がいいって事なのだ。そういう人は初めてなので更に話を聞くと、つまり子供の頃に食べた母親の弁当、その御飯がうまかった、その御飯が食べたいって事なのね。面白い。タキモトの世界だ。
・そうだそうだ、崎陽軒のシュウマイ弁当の話。「崎陽軒のシュウマイ弁当、昔は700円だったんだけど、一気に780円にまで値上げしたんだよ。それがこの間見たら750円になってんの。これはねえ、社長派と副社長派の対立だよ。780円にしたら売れなくなったんだろうね、だから750円に下げた。この値段を決めるのに、社長派と副社長派で大論争になったと思うんだよ」こういうタキモトの妄想を展開していた。
・キャンプ場に着いて、鍋釜一式を借り、薪と「豚汁セット」なるものを購入。機材も材料も現地で調達できるんだ、便利だなあと感心する一報、ちょっとインスタント過ぎないかね、とも思う。
・豚汁セットは肉や味噌などに加えて里芋まで入っており、なかなかちゃんとしている。それを見た滝本さんが「しっかりしてるよお」と言うのを聞いて、これも「タキモトの世界」。
・豚汁食べ、残った味噌汁におでんの具材を入れて二杯目はおでん。最後は火に芋を突っ込んでやきいも。

・終わって中野に向かい、廉飲み屋で打ち上げ。さすが、中野の廉飲み屋、妙な客が集まってくる。職人風、劇団員風、ミュージシャン風、オカマ風などなど。映画の話や食べ物の話などで盛り上がる。

■11/5(月)
・どういうわけだか名古屋の知人女性と東京で会うことになり、朝から東京駅に迎えに行く。京橋まで歩いて浅草に向かう。雷門には朝からぽつぽつと観光客が居る。六区を抜け、鷲(おおとり)神社近くの立ち食い蕎麦屋山田屋にて春菊天そばが朝食。ここもブラック師匠のおすすめ。蕎麦は特に良いと思わなかったが、春菊がしっかりと苦い。また量が多いのと、つゆが熱いのが特徴(立ち食い蕎麦屋のつゆは若干ぬるめが多いと思う)
・客はどんどん入ってきて、みんなトッピングを多めに注文している。やはり天ぷらの評判が良いのか、天ぷらを持ち帰る客もあり。

・女性一人では行きにくかろうという事で、吉原を案内する。と言っても大門、見返り柳だけだが。そこから浄閑寺に向かい、遊女の墓を参ってから都電荒川線にて早稲田に向かう。乗客の老人率高し。路面電車に乗ると地形が分かるので楽しい。特に池袋から早稲田に向かう急勾配は面白かった。
・早稲田に降り、そういえばと演劇博物館に寄る。八代目団十郎展をやっていた。夭折した役者で、地獄の手前で贔屓が団十郎を引き留める浮世絵(「鬼と贔屓と団十郎」)が面白かった。
・のち、知人を東京駅まで送ってから赤坂・砂場へ。初めてだが、店狭く、店員多く良い。これくらいの店員密度は必要なのだろう。しかし隣席に、店に入ってから出るまで延々電話してる最低の客がおり、甚だ不快。こういう客を許容してると店の文化ってのが死んでいくのです。池之端にしてもそうだし、並木の藪にも常連らしい変な客がいる。店がいくら頑張ってても、客がそれを潰しにかかるんだからタチが悪い。僕は正直「東京の良心」ってのは既にほぼ死んでると感じてます。
・はしら山葵、焼まつたけで三合。飲み過ぎた。

・表参道から書斎館、インク2本購入。その後どこに行こうかと迷っていると、三田に来いと連絡があり、三田の、その名も「三田の家」というスペースに案内される。飲んで食べて、ヘロヘロになりつつ夜、もう一度門前仲町・BigHornへ。ゆっくり話したかったが、なにしろヘロヘロに酔っているので早々に切り上げる。

■11/6(火)
・雨。この雨の中、荷物を持って歩きたくないので朝から東京駅のコインロッカーに荷物だけ預けにゆく。途上、芝居のチケットを失くしたことに気付き、パニックになる。二日酔いの所為もあろうが、体と頭がちゃんと機能していない。国立劇場に電話して、仮入場券発行手配をお願いする。
・このゴタゴタで芝居に遅れるかと思ったが、なんとか11時過ぎに半蔵門に着く。これもブラック師匠に聞いた弁当屋・桔梗あさひで500円の弁当を買って、資料館に寄ってから仮券の発行を受ける。

・国立の出し物は「浮世柄比翼稲妻(うきよづか ひよくのいなづま)」典型的なお家騒動物である。
・まあこの芝居は「下」の部類に入る。「鈴ヶ森」「鞘当」という有名な場面を優先するあまり、国立でやる通し狂言としての楽しさが失われている。だいいち、仇討ちの話なのに、最後のシーンで仲裁が入って「じゃあ敵討ちは日延べ。また今度!」で終わるなんて、これ以上しまらない話はない。
・後で調べると、当然ながら本当はこの後ちゃんと敵討ちの場面がある。本来ならこういう公演は「通し狂言」とは呼べないのではないか。
・役者もあまり揃っていない。国立の方針として、若手に勉強させるってのがあるんだろうけど、ちょっと軽すぎる。幸四郎もあまり出てこないので、福助が引っ張ってる感じ。

・あとやっぱり思うのは「鈴ヶ森」なんていうのを、いまだに「どうですこれ、面白いでしょう」って得意気に演じている時点でダメだと思うわけです。あの立ち回りははっきり言って無駄です。様式美みたいな物も無いし、今日性もない、中途半端な場面だと感じる。ああいうのは(特に今回のような興行の場合)思い切って短く刈り込んで演じるべきだと思う。歌舞伎座でたまに一幕でやるんならともかく、今回「通し狂言のようなもの」で時間的に厳しい制約がある中で、あれをフルでやるっていうのは時間の無駄です。
・今回1500円の席だったから我慢できるけど、高い席で見てたら「金返せ」って思っただろうな。

・終演後、思い立って神保町に降りスヰートポーヅへ。塩豆をことわり、タキモトの言っていた漬物をつけてもらう。「名残のスヰートポーヅ」を一皿食べて帰る。
posted by LSTY | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
ななは西池袋にあるバックパッカー向けのホテルの一階の 
サクラカフェが良かったです*^^*
Posted by なな at 2012年11月08日 13:38
■なな様
 なんのこっちゃ。
 そういえば最近どうも池袋・新宿・渋谷方面にまで足が伸びません。
Posted by LSTY at 2012年11月08日 15:51
私も先日天竺徳兵衛新噺を観て参りまして、色々調べておりましたらこちらの記事にたどり着きました。
今回、歌舞伎では久しぶりに結構な興奮状態になったのですが、そのあたりをズバリ書いてくださっていて、
読んでいるうちに、もう一度観劇しているような気分になりました。ありがとうございました。


Posted by ゆきこ at 2012年11月14日 11:16
■ゆきこ様
 すごかったですよね。前の猿之助でも、あそこまで思い切って楽しそうには演じていなかったように思います。すごい役者だなあ、と感心しました。
 海老蔵、菊之助、勘九郎、染五郎と若手の役者が活躍してるわけですが、新・猿之助はちょっと常軌を逸してるというか、他の役者とは違う物を感じます。
Posted by LSTY at 2012年11月14日 14:18
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