2015年11月13日

11/5-8日記(いつもの店と神楽坂「梅香」、歌舞伎「神霊矢口渡」感想)

Pop is dead.■11/5
・出発時間がかなり遅れたが、なんとか11時頃東京着。新幹線内で尾辻克彦「お湯の音」「父が消えた」読む。門前仲町BigHornで飲む。酒盗おろしが絶妙

■11/6
・ホテルで朝食の後、日本橋から田原町へ。駒形どぜうに開店と同時に入店。どじょう鍋でビール中瓶1本。通人は飯田屋のどじょうを好む傾向にあるようだが、私は駒形の方が好きで、なぜかというと素朴でありながら典雅な味わいがあるように思うのだ。この店はビールがスーパードライだったり、どうもろくな酒がないように見えるが、そこは我慢。いつもビール1本程度で出るようにしている。鍋一杯だと、それくらいがちょうどいい。
・浅草寺前、六区からフルーツパーラーゴトーへ行き、ミックスジュースを飲んで一服し、三遊亭円生「松葉屋瀬川」を聴きながら浅草寺境内をブラブラ。浅野家の石灯籠を探すが、結局見つからず。
・せっかくの平日だからと卑しい根性を出して並木藪蕎麦へ。お酒は飲まずにせいろを1枚。あれ、ここのつゆってここまで辛かったっけ。

・銀座へ出て伊東屋の旧館へ。プランジャー(パワーフィラー)式万年筆に最適なインク壺が欲しかったのだけど、そもそもインク壺単品の取り扱いがほとんどない。あきらめて、ビスコンティのインクを買って帰る。ビスコンティのインク、昔の容器はガラス製だったらしいのだが今はプラスチックになっているとのこと。残念。
・表参道に行って書斎館へ。ここもインク壺の在庫はほとんどなく、買い物は断念

・表参道から赤坂まで歩く。途中、青山墓地のあたりに見事な渓谷があり感動する。やはり東京は歩かなければ面白くない。
・赤坂に16時頃到着。絶妙な時間。砂場の小上がりで一人酒宴を張る。小上がりの客は、私の他に怪しい老人のみ。この老人がおしるこを食べているのが本寸法である。何故かと言うに、伊丹十三の映画「タンポポ」で大滝秀治がしるこを食って窒息死しかけるシーンがありますね。そのロケ場所が、まさにこの「赤坂・砂場の小上がり」だからなのです。私の隣で、今まさに老人がしるこを食べている。緊迫の一瞬であります。
・さて私はつまみに柱わさびをあつらえ、それでお酒を二本。それからざるを1枚。
・こういう時間帯の砂場でざる。不味かろうはずがない。素晴らしい宴だった。数年前、神保町のスヰートポーヅで相撲中継を見るともなく見ながら餃子でビール、というのも素晴らしい体験だったが、今回も感動的なひとときを過ごせた。

・サントリー美術館で久隅守景展。国宝「納涼図屏風」の展示は前期で終わっており、それがないと屁のような展示だと思う。
・門前仲町オーパおよびBigHornで飲んで帰る。

■11/7
・思いの外痛飲した模様で、朝、起きられず。
・昼前に出て日本橋から三越前へ。コレド室町で開高健「小説家のメニュー」を買って、三越を素見す。大食堂があるようなので懐かしいな、と思って見に行くと馬鹿高い価格設定でドギモを抜かれる。屋上で休憩し、抜かれたドギモを落ち着けてから蕎麦屋「紅葉川」へ。
・知人に「ここの鴨せいろは旨い」と聞いて来たんだけど、店に入った途端「あ、この店は違うな」と分かる。私が考える理想の蕎麦屋とは全く違う。サラリーマンの腹を満たすためのソバ屋だ。こういう店では酒を飲む気にもなれないので、おとなしく鴨せいろ1,360円也を注文。
・豚コマを極限まで薄く切ったみたいなチリチリの鴨肉と、鴨の肉団子が入っている。いずれにも鴨の味を感じず。しかしこの鴨せいろ、旨いと思う気持ちは分かる。さらに「無性にまた食べたくなる」という気持ちはもっとよく分かる。蕎麦というより、ラーメン的な世界の物ですな、これは。例えば、浅草・角萬の「肉なんばん」であったり、東陽町・花村の「志のだそば」であったりという、ああいう類いの物であって、決して悪くはない。

・東京駅まで歩き、中央線に乗って荻窪から西荻窪へ。荻窪駅ホームのアナウンスは女性の声で「おぎくぼー」と間抜けに伸ばすので可笑しい。西荻窪でも同様に「にしおぎくぼー」と間抜けである。
・ウレシカという雑貨屋兼ギャラリーで、編み物による動物アート展を見る。村上隆とかああいう感じの前衛アートっぽかった。中で、陶製の大山椒魚があり、これが黒々と光っていて良い。Twitterでこの写真を見て、これを見に来たのだ。
・何か甘い物が食べたくなり駅南側のグレースという店でケーキと紅茶。甘い物が食べたかったのに、この店のケーキは上品な「甘さごく控えめ」の物であった。店内満員なのに一人でスポーツ新聞を一杯に広げ、3人分の座席を占有しているオヤジが居て、死ねと思う。同じオヤジとして恥ずかしい。

・各駅停車で新宿に出て、東急ハンズでインク瓶探し。ここでも良い物が見つからず、エルバンのカートリッジインクを2つ購入したのみ。化学実験用具としてガラス瓶がいくつも売られているのだけど、瓶の口径が分からないので万年筆に使えるのかどうか、判然としない。紀伊國屋で雑誌など眺め、ゴントランシェリエでパンを買った後、西口「キングダムノート」へ。ここでもインクと、あとこの店オリジナルのスポイト付きインク瓶を買う。
・新宿西口から牛込神楽坂の中国料理店「梅香(メイシャン)」へ。ここは初めての店。ビール、冷菜三種盛りから始める。冷菜は蒸し鶏の青山椒ソース、豚の耳、冬瓜の干し蝦煮込み。これは驚いた。こんな中華料理、しかも四川料理があるのか。薄味で、飽くまでも上品。その味の奥深く、はるか向こうの方に四川の「麻(マー)」を感じる。山奥深く分け入り、四方が全く見えない霧の中で、聞こえるともなく聞こえる鶉の鳴き声。そのような、まさに「幽玄系四川料理」だ。
・その後、海老の青山椒ソースを頼み(蒸し鶏とかぶった)海老そばを頼み(海老でかぶった)おなかいっぱいで店を出る。うまかった、という事は分かるのだけど、日頃粗食に甘んじている身には難解すぎる味ではあった。
・どういうジャンルにも「良いと分かるもの」「悪いと分かるもの」の他に「よく分からないもの」ってのがあり、その「よく分からないもの」というのが実は「ものすごく良いもの」であるケースが多い。この梅香という店の料理は、まさにその「よく分からない味」であり、これはしばらく食べ続ける必要がありそうだ。

・開高健「小説家のメニュー」印刷面が狭く、文字も大きいので読み終わってしまう。面白いのだけど食味の表現がワンパターンではある。あと魯山人や伊丹十三のように自身が良き料理人ではない(食べる専門)なので、説得力やディテールに欠ける気がする。で、一番疑問を抱いたのが松茸の項で「松茸に柚子をかけて食べる」という表現が見られたことで、松茸に柚子?それは変なんじゃないのか?と。松茸には「かぼす」や「すだち」が通り相場である。柚子とすだちの違いが分からなかった?開高健が?まさか。しかし柚子はおかしかろう。
・BigHornで飲んで帰る。Sさんという学生さんと会う。

■11/8
・また二日酔いで起きられず。しかしようようベッドから出て早稲田から雨の中、永青文庫へ。早稲田の学園祭が開催されているようで人甚だ多く、鬱陶しい。永青文庫で「春画展」の図録だけ買って出る。早稲田から九段下、半蔵門へ。

・国立劇場にて「神霊矢口渡」見る。平賀源内作の歌舞伎、復活狂言ということで初見。新田義貞と足利尊氏の対立というか、義貞死後(義貞の子、義興が殺された後)の話で、この話では新田がイイモン、足利側が悪者になっている。
・主演の中村吉右衛門の役は、元は新田の家臣で足利に寝返った由良兵庫之助。新田で足利で由良で兵庫(播州)なのだから、これは当然、忠臣蔵の大星由良之助(大石内蔵助)のパロディであろう。もちろん、この名前から分かるとおり「足利に寝返ったと見せかけて、実は新田側の人間」なわけである。大星由良之助の放蕩ぶりを、もっとハードコアに悪役、裏切り者に寄せた役柄。ここは一條大蔵譚とも被るような設定
(由良兵庫助という人物は実在したと後で知るが、実在の兵庫助は義興の死後すぐに自害したらしく、今回この芝居のような形で出てくるのは、やはり忠臣蔵になぞらえて、ということないじゃないか)
・子供が殺されるのには(去年12月の吉右衛門の芝居とは違い)ある程度の必然性があるのに対し、又五郎が犬死にするのが変だった。吉右衛門は良かった。こういう役は良い。
・中村米吉は中村隼人の恋人役。は黒い着物でペアルック。実にかわいいのだが、国立劇場では舞台写真の販売がないのです。
・最後のシーンは八百屋お七や船弁慶のパロディ。ヒロインの芝雀がしつこい芝居でなかなか死なないのでイライラする。最近の歌舞伎の演出はケーハクタンショーなのがほとんどなので、こういうねちっこくて長い芝居を受け付けなくなっているのだ。まあ芝雀以外がやったらどうだったか、という話もあるな。例えば壱太郎だったら、七之助だったら、あるいは猿之助だったら、さらに米吉だったら、また違った感想を持ったのかも知れない(ちなみに米吉は今月の研修発表会で、この役を演じる)

・芝居の休憩時間に昨日ゴントランシェリエで買ったクロワッサンと、鰯のキッシュ
・東京駅の大丸で、ままどおるとエキソンパイを買って帰る。
・大きなリュックに荷物を詰め、重い図録に土産の包みを両手に下げ、さらに傘まで持って歩いていると、疎開民のような気持ちになった。
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