2011年11月23日

最近の日記(新解さんの謎・天食・タキモトの世界)

Pop is dead.
Pop is dead.・赤瀬川原平「新解さんの謎」読了。
・久しぶりに声をあげて笑える、面白い本だった気がする。特に「動物園」な。ただ、悲しいかな私が持っている新明解国語辞典(第六版)では、動物園の項は変わってしまっている。その他の語句についても、用例が短縮されてる印象。
・ともあれ「新解さんの謎」は好著であった。イデオロギーだよね、真面目に考えれば、危険な辞書ですよ。飽くまでも異端として存在しているから笑っていられるけど、人格を持った辞書というのは怖いな、たしかに。

・泉昌之「天食」読む。泉昌之の食べ物漫画。漫画なので「読書」には含まれない。
・「食の軍師」の方が面白いけど、まあまあ。というか装丁のセンスが最悪なんだけど、中身はそれなりに良い。いつもの泉昌之の感じ。
・そんなことより、泉昌之っていうのは、泉晴紀と久住昌之で泉昌之なのね。泉昌之とQBBと久住昌之の違いが分からない、と思っていたら、例のあの濃い絵柄(最近なら主にサムライもの)は泉昌之で、「中学生日記」みたいな稚拙な漫画がQBB(久住兄弟)で、久住昌之名義の作品は文字作品、という事か。あ、「孤独のグルメ」は久住名義だけど(作画は谷口ジローという人)あれは「共著」というククリか。

・久住昌之・滝本淳助「タキモトの世界」買う。4000円くらいだったか、ページ数多いし写真も載ってるので豪華本なのか、古本でもその程度の値段なのか、と思ったらプレミアム価格だった。だまされた!
・これはカメラマン・滝本淳助の世界観を久住昌之が面白おかしく聞き書きする、みたいな本なんだけど、実はそんなに面白くないのね。今の僕にとって「タキモトの世界」は異常ではない。とても自然で、すっと入ってゆける世界に思えるのです。
・ペパロニライスがどれだけ素晴らしい食べ物か、タキモトの言う「静かな生活」がいかに魅力的な日常か、これよく分かる。久住昌之の意図としては、タキモトの思想・世界観がヘンテコなので、そのおかしさを茶化そうというものなんですが、その意図は外れている。
・これは時代ね。1980年代半ばからの文章なんです。バブルですよね、日本人の誰もが資本主義に疑問を感じていない頃ですよ。もちろん右翼と左翼の対立構造はあったけれど、つまり、今のように我々普通の人間が「あれ?資本主義ってダメなんじゃねえの?」とか「成長すること・お金を持つこと=幸せ、じゃねえよな」って考えるようなことは、多分当時は無かったんじゃないかと。社会的メッセージとして「反資本主義」「お金だけが幸せじゃない」というのはあっても、そんなもの庶民の実感としては無かった時代でしょう。
・「タキモトの世界」は、今風に言うと、スローライフなんだと思うわけですね。セカセカしてない。新しい物をやたらに求めない。これ、80年代には特殊な感覚なんだろうけど、今読むとトンデモじゃなくて、むしろ理想的な生き方。
・まだ途中までしか読んでないけど、トンデモを期待して読むと期待はずれかと思う。

・IT社会って、とりあえず誰でも考えを表出させられる社会なわけですよね。ブログにせよ、twitterにせよ、はてなブックマークにせよ、誰でも簡単に「表現」ができて、それに対してすぐに「反応」できる。でもつくづく思うのは、そういう世界にいると、僕たちの「考える時間」ってのはどんどんムシバマレルわけですよ。
・書いて読んで反応して、という繰り返しで、考える時間ってのがない。考える時間というのは、言い換えればヒマな時間です。いつでもどこでも、外部からの情報にアクセスできるために、ヒマな時間がなくなる。
・これはねえ、貧困というべきものじゃああるまいか、と思うわけですけどね。欲望というか強迫観念というか、情報が流れているとアクセスし続け、反応し続けなければ気が済まない、業というべき物がありますね。

・思い返せば、大学の授業というのはヒマの宝庫だった。興味のない一般教養の授業なんて、90分丸々のヒマ。贅沢な時間でした。

・あ、そういえば「タキモトの世界」に対する最大の不満は、その製本にある。ページをめくると表紙・背表紙の接着部分がキュキュッって言うのね、すげー不快なの、その音というか感触が。これ、宮崎駿の「妄想ノート」もそうだったんだけど、こういう不快な物をまき散らしておいて、よく平気でいられるな、と思うわけです。
・これ、製本方法自体に問題があるのか、個体差なのかよく分からないんですが、とにかく不快です。

・最近面白いと思って見ているテレビ番組は、タモリ倶楽部、怒り新党、アメトーク。怒り新党はもう勢い無くなってきたかな、と思うけど見てる。
・タモリ倶楽部は基礎教養なので、現代人たるもの、すべからく視聴すべき番組として、アメトークは近年稀に見る良番組。なのでDVD借りてまで見てる。

・「圓生百席」3枚買う。全部で58枚あるんだけど、まだまだ半分くらいしか買えてない。58枚と言っても、CD2枚組だから、総枚数はCD116枚ね。
・伊丹十三のブルーレイBOX予約注文。初監督短編映画「ゴムデッポウ」収録ということで居ても立ってもおられず、禁断のAmazon予約注文。
・古地図本「江戸から東京へ 明治の東京」買う。以前買った江戸地図と比べて、甚だ見にくい。東西南北表記が無く、現代地図との比較になってないので、これは使いにくい。
・赤瀬川原平「利休-無言の前衛」買う。赤瀬川原平って病気なんだっけ、三國連太郎も歳だし、この二人が死んだら映画「利休」はブルーレイででもリリースされるだろうか。こういう事を思うようになった。つまり、まともなリリースがされてないのね。だから高齢の芸術家の死を望むようになる。歪んでいるなあ、と思うけど、そうし向けるような市場構造になってるのね。良い作品だからリリースするという理想が、メーカーにない。良いか悪いかではなく、売れる物を売れる方法で売るだけ。どれだけ愚痴っても、日本の出版業界、新聞テレビ週刊誌が変わることはないでしょう。

伊丹十三 FILM COLLECTION Blu-ray BOX T
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