・仕事で使う万年筆で何か、と思ってずっと引っかかっていたもの。
・モンテグラッパのメインは10万円くらいの万年筆だと思うんだけど、ネロウーノの一番廉い物(僕が買った物)は3万5000円と手頃である。
・3万5000円を「手頃」と思ってしまうのが、万年筆症候群の特徴なわけだけど、実際、この価格帯は標準です。
・先日「初心者向けの万年筆は何が良いのか?」と訊かれたんだけど、やっぱり3万円から4万円のヨーロッパ製で、デザインの気に入ったものが良いんだろう。
・3万円台というのは、一般的な万年筆メーカーの主戦場で、品揃えも豊富だし、メーカーも注力して作ってるから品質面でも良かろう、という根拠です。
・1万円台までの万年筆は、特に海外メーカーの場合「お遊び」のラインなので、初心者向きではない(LAMYは例外)だし、2万円台はちょっと中途半端なのです。
・ペン先はF(細字)かM(中字)。万年筆のペン先は太い方が良いというのが定説で、一般的にはMからBが薦められる。たしかに、太字の方が書き心地は良いんだけど、汎用性を考えるとFからMが良かろう。あんまり太いものだと、日常、例えば仕事なんかでは使えない。海外製品であれば、F字でもそれなりに太いので、書き心地が損なわれることはない。
・ただし、日本製のFは非常に細いので注意。
・なぜ海外製がおすすめなのかというと、これは私の印象だが「書く快楽」を追求しているように思うから。
・日本製の万年筆も、品質は良い。しかし基本的性能と安定性重視で、快楽の追求という点では海外製品に負けるのではないか。
・で、僕はモンブラン素晴らしいと思うので、マイスタシュトュックなんか良いと思うんだけど、ちょい高なのね。5万円から。予算が許せばマイスターシュトュックも良いんじゃないですかね(僕は持ってないけど)
・なんで「ヨーロッパ製」と書いたのかというと、アメリカ製は使ったことないから。
・で、せっかくだから万年筆の専門店で買いましょう。専門店じゃなくても、少なくとも「試し書き」のできる店で買いましょう。
・廉い買い物じゃないんだから、交通費を使ってでも、大きな店に行って、現物を確かめて買った方が良い。
・というのも、万年筆には「あたりはずれ」があるんですね。僕はペリカンの万年筆を2本持っているんだけど、これは2本ともハズレ。書いているうちになんとかなってくるんだけど、初心者が一本目に買った万年筆がハズレだとダメージ大きいから、試し書きした方が良い。
・試し書きして、明らかに引っかかりがある場合はやめた方が良いね。
・で、文字を適当に書いてみて、文字の表面がインクで光っているような状態ね、つまり、インクがすぐに乾かずに濡れている感じ、そういうのが良いと思う。試し書きする紙の質にもよるんだけど、そういう状態っていうのは「インクの流量が多い」わけですね。流量が多い方が、書き心地は良くなる。もちろん、インクが出過ぎてにじむのはダメだけど。
・あと、重みと筆記バランスね、これは好み。ただ、筆記バランスに違和感がある場合は要注意。たとえば、お尻の方が異様に重くて書きにくいとか。使用頻度が高い人ほど、ここにはこだわるべきかも。
・で、専門的な話ですが、避けないといけないのは「カートリッジ専用」万年筆ね。これは絶対にダメ。万年筆の楽しみである「インク吸入」の醍醐味が味わえないから。
・「カートリッジ/コンバータ選択可能」が一般的で汎用性もあり、良いと思います。
・あとは、ペン先素材も確認した方が良い。3万円台の万年筆であれば、ペン先は18金でしょう。この価格でペン先が14金っていうことは、万年筆の基本性能を軽視してるんじゃないか、と私個人としては思います。まあ14Kならまだ良いが、スチールペン先は論外ね、3万円でスチールは論外。
・最後は好みの話だけど、キャップの形状ね。「ねじ式」か「引っ張れば取れる式」か。後者の方が、すぐに書けるから手軽ではある。ネジ式だと、何度もキャップを開け閉めする煩わしさはあるね。特に万年筆は、ペン先の乾燥を防ぐためにキャップの開け閉め頻度が高いので、気になる人は気になるかも。
・まとめましょう
【初心者向け万年筆とは?】
□価格:3万円台
□メーカー:ヨーロッパのメーカー
□ペン先の太さ:F(細字)またはM(中字)
□ペン先の素材:18Kまたは14K(スチール製はNG)
□機構:カートリッジ/コンバータ両用など(カートリッジ専用はNG)
□買う店:試し書きができる店
□試し書きのチェックポイント:ひっかかり、インク流量、重み/筆記バランス
・こんなとこでしょう。上記の縛りの中で、あとは好きなデザインを選べばいいと思う。
・因みに僕が持ってるこの価格帯の万年筆は、ウォーターマン・カレンデラックス(M)と、先述したモンテグラッパ・ネロウーノ(F)、それにパイロット・クアトロ89(F)ですが、いずれもスマートなデザインで、また書き味も官能的であります。
(パイロットのみ日本製、こいつの筆記バランスはかなり独特で、個人的にはそこを含めて好きだけど、他人に薦められるかというと微妙)
・補足:そもそも「初心者向け」とはなにか?という話
・一般的に、万年筆を紹介したサイトで「初心者向け」というとラミー・サファリとか、ペリカン・ペリカーノジュニアとか、5000円ソコソコの「廉い万年筆」が薦められています。
・それはそれで分かるのですが、僕としては単純に「買いやすい=低価格」なものが初心者向きだとは考えていません。
・万年筆の本質的な楽しみは「筆記による官能体験」って事だと思うのですね。ぬるぬるするすると、ペン先がすべる感触、そういう、万年筆ならではの快感を得るためには、5000円のではダメだと言うことです。
・また贅沢品を所持する満足感もある。ただの実用品ではない。
・そういう、万年筆ならではの楽しみが味わえるものこそが「初心者向け」だというのが僕の考え方です。
・さらに、いわゆる「エントリーモデル」ではなく「こういうものを一本持っていれば、とりあえず大丈夫」という考えに基づいています。そういうわけで、上記記事を読んで「初心者向けじゃねーよ!」と思う方も多いと思いますが、そういう事だと理解いただければ。
・ちなみに、いわゆる「エントリーモデル」であればラミー・サファリがおすすめです。
万年筆がお好きな様子がひしひしと伝わるエントリについ引き込まれ、お邪魔いたしました。
リシュモン傘下から離れ、
ようやく昔みたいに買える価格に戻ってきたモンテグラッパですが、
ネロウーノはどんな書き味なんでしょうか?気になります。
見た目、パーカーみたいなペン先になってますが
硬くなってないでしょうか?
僕が持ってる金製のペン先は、ネロウーノと、パイロット・クアトロ89、ウォーターマン・カレン、モンブラン・カフカモデル、ペリカン・M400ですが、ネロウーノはその中でも柔らかい方だと思います。
筆圧に気をつけないとペン先が開きそうな感覚ですかね。
インクの出方も、ペリカンのようにドバドバ出る感じじゃなくて、たとえばロットリングのライナーのようなスムーズさがあります。
もちろん個体差はあるでしょうが、かなり絶妙な印象です。