
・カスタムヘリテイジ92は国産には珍しい吸入式万年筆で気にはなっていたのだが、スケルトン仕様なのでアラが目立つ。アラというか、尻軸のねじ切りが特殊なのですね、おそらくゆるみ防止のためだと思うんですが切り方が特殊なのか、あるいは接着剤が入っているのか。スケルトンだと、こういう細かい部分が気になってしまう。
・プレラ色彩逢いが良い例で、あれはパイロットのデザインがどれだけ貧困かっていう見本ですね。センスの悪い人が廉価版のスケルトン作るとここまでひどくなる、という。LAMYサファリのスケルトンと比べるとよく分かりますよ。
・で、そのカスタムヘリテイジ92に、Sという色つきが出た。黒、青、橙とあるんだけど、この黒を買った。色が付いていれば、スケルトンならではのアラが気にならないだろう、と思ったのだ。
・そういう意味では成功だった。
・あと、説明書の封入ミスがあったんだ。この万年筆はピストン吸入式なんだけど、プランジャー式の説明書が入っていた。ラッキーである。プランジャー式の仕組みが理解できた。
・プランジャーとはPlungerで、英語ではピストンや「トイレのスッポン」を差すようだが、つまり真空状態を作ってインクを吸い込む方式で、かなり珍しい機構です。
・ただ、封入ミスではあるわけで、何も知らない人がこの説明書を読んだら、間違えて万年筆壊しちゃうよ。だって尻軸を引っ張れって書いてあるんだもん。ピストン吸入の尻軸を思いっきり引っ張ったら壊れるよ。
・さてこの万年筆、かなり大きなペン先が付いている。クアトロ89より大きい。クアトロ89は3万円、カスタムヘリテイジ92は1万5千円である。一般的に、万年筆のペン先は大きいほど高いのだけれど、この値段の万年筆にこの大きさのペン先は不釣り合いなほど。
・つまりパイロットとしては、1万5千円という低価格で、14金の大型ペン先、さらに万年筆の本格である吸入式を備えた商品を作るという、つまり勝負をかけた感じですかね。「低価格で高品質」という、日本人らしい商品だと思う。
・この価格でこれだけの物を作るというのは、大したものであって、万年筆初心者にも買いやすいし、お勧めできる物ではあるなあ。
・しかし失敗したのだ。細字(F)を買ってしまったのだ。仕事用だし、Fにしようと安易に決めたんだが、パイロットのFは細すぎる。線幅は0.5mmくらい(ロットリングと比べてみた結果)これくらい細いと、リラックスしてのびのびと文字が書けない。細かいメモ帳に書くのなら良いが、ちょっとイヤだなあ。あー、だから通販じゃなくて店で試し書きしろってのはここだよなあ。失敗した。
・インク流量は、多少少なめの印象。ただここまで細字だとこんなものかなあ。
・というわけで、お勧めするならM(中字)以上。それでもペリカンなんかのF字よりはずっと細いはずです。
・さて吸入機構については、さすが日本製でありました。こいつはピストン部分がすごく薄いんですね。ペリカンのピストンは5mmくらいなんだけど、こいつは1〜2mm程度。これで大丈夫なのかと思ったら、実にしっかりしている。ペリカンよりもずっとしっかり吸入する。
・結論としては、M字以上ならいいんじゃないですかね(多分)って感じ。この値段でこのスペック(14金ペン先・吸入式)なら買い物ではある。
・ただやっぱり、万年筆の快感を得ようとするなら3万円以上のヨーロッパ製がお勧めではあるんだなあ。僕の持っている中では、2万円もするのにステンレスペン先のスティピュラ(イタリア製)の方が、カスタムヘリテイジ92より書き味が良い。
・繰り返すが、M字なら書き味はいいかも知れない。
パイロット万年筆 カスタムヘリテイジ92 透明ブラック 中字(M)
