2012年04月17日

長いぜ四日分まとめ日記

Pop is dead.
Pop is dead.・快楽亭ブラック師匠への誕生日プレゼントについて考えていて、突如すごい妙案が降ってくる。
・プレゼントっていうのは、考え続ける執念ね、相手に対する愛情とも言い換えられるけど、その執念が第一。そこに、自分が持っている知識と、そしてアイデア。その三つで見つけるものです。

・落語と言えば、世の落語ファンていうのは、一つの話の中で「この部分が好き」とかあるんだろうか。
・僕は結構ある。ほんの短いフレーズ、それを聞くために、その落語を聴く、というような、ごく短いシーンがとても好きだったりする。

・「梅若禮三郎」だと「いらしゃいぃー、宮下へどうぞ」このフレーズが好き。それに「さい鍋で一升ぅー」ここの描写
・「真景累ヶ淵」だと、勘蔵が死んだ後の駕籠屋のくだり
・「生きている小平次」は何と言ってもラストシーン、「友達を殺しちゃった…」も好きか。
・「双蝶々」では、小僧を殺すシーン。掛け守りを買ってやるってくだりね。「良いの買っておくれよ」ってああいう台詞が、残酷さを際だたせる。圓生百席ではその後、番頭を殺すまでの流れが実に素晴らしい。一級の芸術口演
・「怪談乳房榎」だと、落合の風景描写
・「髪結新三」は新三が忠七を連れ出し、雨が降ってきて豹変するシーン。あそこにおける忠七の態度の変わり方

・以上、ほとんど圓生師匠の録音からだけど、話の本筋の、本来の聞かせ所とはちょっと違う部分が好きで仕方なかったりする。

■4/13
・国立劇場で「絵本合邦辻」見る(辻は、正しくは「行」の間に「瞿」?)
・いわゆるピカレスクロマン。ただ、これはインフレーションだと思うんですよね、人を殺して殺して殺しまくるんだが、殺しすぎて飽きてくるというか、演出が単調で深みがない。
・左枝大学と太平次の描きわけをする意味でも、太平次が女房を殺すシーンについてはもうちょっと躊躇がなくてはなるまい。あと、太平次が殺されるシーンがなかったが、あれは元の台本にもないのか?おかしいよ、それは。
・この芝居になぜ左枝大学と太平次という「二人の悪人」が出てくるのか、その根本が分かっていない。ナチュラルボーン大悪人の大学と、出世のために手を汚す太平次、という対比があるから、この芝居は面白いのだ。それを一人二役でやる意味も、そこにある。
・だから、太平次が大学に殺される、というシーンはとても重要なのです。と、調べてみると、元の台本では太平次は、大学ではなく、善人側・お縫に討たれるのね。いずれにせよ、太平次の最期を見せるというのは大事ですよ。はしょっちゃいかん。

・しかし配役が良くなかったなあ。仁左衛門と時蔵の二人だけでもってる芝居、という印象だった。左團次は悪人顔だからああいう役は向かない。
・あと、やっぱり今、観客が悪いね。芝居を見ていない客ばかりで、反応がおかしい。一番最後、死んだはずの役者も全員揃って舞台で挨拶する、ここで客が笑う。あのねえ、仇討ち物なんかでは、これはよくあるカタなんです。普通なの。
・いい歳した客ばっかりなんだよ、それが芝居のルールも知らないってんだから、ゾッとする。日本の文化は本当に、危機に瀕していますよ。20年前はこんなんじゃなかったもの。

・国立演芸場に芝居噺の資料が展示されていて、これがメッケモンだった。正蔵師匠(本物の方の正蔵師匠ね)や圓朝の肉筆原稿あり。
・終演後、永田町まで歩いてイシダさんと待ち合わせ、永田町・黒澤で食事の後、赤坂・ティアレ、門前仲町・BigHornと飲み歩く。
・マンガ「森山中教習所」薦められる。

・永田町の黒澤は、料理がうまいがしかし蕎麦屋としては高圧的すぎる。ヤナセやモンブランショップに共通する、貧乏人を見下した空気がある。あんな蕎麦屋ではくつろげぬ。そういう意味で二度と行かない店。
・ただ、料理はうまいよ。蕎麦は、普通。良くも悪くもない。

・ティアレではパクチーのモヒートを初めて飲む。これは面白い。パクチーの香りが、とてもよく作用している。
・BigHornでベロベロになるまで飲んで帰る。

■4/14
・二日酔い。並木藪の開店に合わせてdoggylifeさんと待ち合わせる。あまりに気持ち悪いのでお酒はお猪口に一杯のみ。
・しかし、ここのつゆは二日酔いに優しいのです。

・浅草演芸ホールへ。ここ、モギリの兄ちゃんの感じが悪いね。
・春風亭一之輔という人の真打昇進披露興行ってことで、大入満員。辛うじて座れた。
・春風亭百栄(ももえ)悪くないが、若手が新作に逃げる危険性も感じた。そっちの方が受けるからって新作ばっかりやってちゃダメよー。
・喬太郎休演のため、代演はさん喬「替り目」、さん喬は悪くないんだけど、真面目な雰囲気が前面に出ちゃって、落語家としてはどうなのかといつも感じる。
・春風亭一朝「強情灸」、柳亭一馬「貧乏花見」ここら辺は、どうということなし。
・三遊亭円丈「新・寿限無」、初めて聞いたが、これが面白かった。非常に高度なナンセンス・パロディーである。大須も見に行こうか、と思わせた。まあただこれって「落語オタクのための落語」ではあるんだよね、内輪受けに近い。喬太郎の新作に似た、ちょっとしたイヤミさを感じた。
・鈴々舎馬風、三遊亭円歌は漫談でごまかしている。お前らがこんなことだから落語がダメになったんじゃねえか、と感じる。三遊亭金馬はネタらしき物をやっただけ評価するが、吝嗇の小咄を集めただけのもの(「けち比べ」)
・こぶ平「味噌豆」ひどい高座だ。僕は、三平って否定しないわけですよ。古典できないとか言われるけどさ、「源平盛衰記」良いじゃないですか。あれは新落語として良いですよ。たしかに圓生師匠の言う「あれは落語じゃありません」もわかるが、三平の芸はアリですよ。それを継げば良いんです。その努力すらしていない。ゴルフ焼けしてる場合じゃないよ。

・トリに近付くほどマズくなってくるので、どうなる事かと思ったが、春風亭一之輔の「粗忽の釘」、非常によかった。爆笑また爆笑。若い頃の小朝を見ているようだった。粗忽の釘なんて、子供だましの噺じゃないですか。大した噺ではないんですよ。そこの本に、ものすごく手を入れ、工夫して爆笑につなげている。しかも、元の噺を破壊せずに、である。
・こんな才能が今まで二つ目だったとは信じられない。真打披露だって事で、高座に花が飾ってあるのを見て「交通事故現場みたいですね」なんていうセンス、これはすごい。この人はこれから間違いなくテレビなんかでも売りだすよ。

・一之輔が終わると、客がザーッと帰るが、川柳を見たかったので残る。川柳川柳おなじみの「ガーコン」!死ぬまでに一度は見ておきたいと思っていただけに、感動だった。下ネタで引いた客に向かって「教養を得るために寄席に来るなんざ、大きな間違いだ!」と吐き捨てるように言い、「みんな、北朝鮮に生まれなくて良かったな。この国に生まれた幸せをかみしめて、もっと笑え!」と笑いを強要する。これは生で見てよかった。

・川柳見た後で寄席を出、観音裏の「肉のすずき」に行くが満席で入れず、沖縄料理を出す居酒屋で飲む。
・帰途、もつラーメンなるものを食べるが、まずくて量の多いシロモノだった。

■4/15
・朝、上野から根津まで歩き、鷹匠で一杯。朝から飲める蕎麦屋として、とても重宝な店。今回は深山蕎麦を食べたが、太くて食べにくいな、あれは。いわゆる「田舎」よりも随分太い印象。
・鶯谷より山手線に乗り、新宿へ。高島屋で出汁巻き卵(今日のつまみ)と献上加賀棒茶(タキモトへの土産)を買い、モンブランのファインライナー芯を仕入れて、笹塚へ花見に出かける。
・花見終了後、「これから打ち上げをするからどうか」と言われ、居酒屋で飲む。「花見の打ち上げ」なんて聞いた事がないが、実に楽しい時間を過ごす。タキモトの「人をリラックスさせる力」を感じた。

・今日の「タキモトの世界」的発言。
・「糸井さんはえんえん犬探し、猫探し」(twitterでの糸井重里の活動について)
・(「剛力彩芽はどうですか?」との問いに)「気が付いてはいるけどね、剛力にはね。」

・泉昌之「食の軍師」に、崎陽軒・シューマイ弁当についての漫画がある。ここで登場人物が「アンズは、最初に食べて『なかったこと』にする!」って言うんだけど、僕はこれ、絶対にタキモトだと思ったのね。だから本人に聞いてみた「タキモトさんは、シューマイ弁当は何から食べます?」って。答えは「唐揚げ」。え?アンズは?「アンズはデザートだから、最後に食べる」とのことだった。
・なんだハズレか。ただ、この「なかったことにする」というフレーズは「タキモトの世界」からの拝借だろうね、という結論に至った。

■4/16
・昨日行くはずだった書斎館へ。いろいろと見せてもらうが結局なにも買わず。既に売り切れているデルタの限定品イヌイットがあったが、M字だったため買わず。あぶないあぶない、9万円の万年筆買うとこだった。
・いろいろ親切にして頂いたのに何も買わぬのは申し訳ない、と思いつつ店を出て、帰途に気付いた。ネロウーノのボールペンに、他社製イージーフロー芯を入れて使えばいいのだ。これが正解だった。しかし、時既に遅し。今回は書斎館に縁がなかったということか。

・渋谷まで歩き、高田馬場から傘亭へ。鮪の漬けで一杯、せいろ一枚。蕎麦は普通。長短が揃っておらず、食べにくい。しかし、つゆがうまい。蕎麦湯で割ってみると、実に良い。並木藪のように特徴的なつゆではない(並木藪の特徴は酸味だと思う)しかし、うまいつゆだ。控えめながら気持ちの良い甘味がある。
・しかし噂に聞いていたが、たしかに頑固そうな親父である。店内に「蕎麦屋経営希望者に、当店を廉価で売り渡します」との貼り紙。店を辞める気だろうか、真意は分からぬ。

・下落合まで歩き、西武新宿線に一駅だけ乗って高田馬場からメトロに乗り継ぎ、新日本橋へ。本当は神田で降りたかったのだが、間違えた。
・しかし室町の砂場へは、新日本橋からの方が近かったようである。空豆で冷やを一杯、せいろ(ざる)を1枚。ここの蕎麦は、なぜこれほどまで美しいのか。こんなに美しい蕎麦、見たことないね。
・ただ、昼の混雑時なんかに行くとフロア担当がバタバタしてて、蕎麦を置きっぱなしにしてたりする。この美しい蕎麦は、昼の時間を過ぎ、他店が中休みに入った頃にだけ、味わえるのだ。これは私の経験上、本当の話です。
・店内を見渡すと、ここの蕎麦を犬食いしているサラリーマンや、せいろを30分かけて食べている老人などいる。歌舞伎の話もそうだが、享受する側の人間が低レベルでは、文化なんてすぐにでも死に絶えるのです。

・いろいろと考えながら帰り、いつもの店で一杯。かようにして、週末をまたいだ数日間を終える。
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