・親切と言えば池之端の藪も開店前から「ご注文はのれんが出るまでお待ちください」と言いながら店に入れてくれた。母から、その池之端藪が閉店したと聞き、驚く。母は「あの店が一番おいしかったのに」と残念がる。私はそうは思わないけれど、あの店には「そばなえ」があったのが良かった。いわゆる「蕎麦のスプラウト」であって、ああいうさっぱりしたもので一杯飲むという楽しみがあった。
・芦屋川上流にある店で景色が非常に良いので、駐車場に出て山や木や川を見ていると30分くらいはすぐに過ぎる。前述した通り蕎麦屋で待つなんていうのは嫌いだけれど、負けず嫌いを言えばこの店の場合、待つ時間にも価値はある。
・玉子焼きを一口食べるが、味は薄い。東京の甘い玉子焼きでもなく、かといって関西風の出汁をおごったものでもない。
・蕎麦は、意外にも香りのあるちゃんとした蕎麦だった。関西で、このレベルのものを安定して出しているのであれば大きな顔をして良いだろうと思う。立派すぎる店構え、きれいすぎる庭と景色、もり1,000円という値段を見て「この店は不味いんじゃないの?」と思っていたが、文句を言いたい私の期待を裏切って、まともな蕎麦だった。
・つゆは少し独特で、多少の生臭みを感じるがイヤミではない。東京の蕎麦屋と比べると味は多少薄め。蕎麦湯で割ると動物系スープのような味がするが、何を使ってるんだろう。例えばまぐろ節みたいなものを使うと、動物っぽい味が出るとかだろうか。
・薬味は大根おろし、山葵、しっかり目にさらした葱。しながわ翁で私が感心してしまった薬味と同じラインアップで「わかってる感」がある。山葵もうまい。ただ葱は、いまひとつさらし方が足りないので蕎麦には使わず。あと七味がないのは不思議。頼めば出てくるのかも知れないけど。まあ無ければ無いで良いが。
・食べログ評価点は3.55。まさに菊地成孔の言う「食べログは3.5点くらいが一番うまい」の範囲内の店だろうと思う。低い点数を付けている人のレビューを読んでみると「高い」「量が少ない」といった意見が複数。値段が高いというのは分かるが、あれだけの舞台装置を維持することを考えれば仕方なかろう(関西で幅をきかしているチェーン店「土山人」の890円に比べれば、ねえ)また蕎麦屋に「量が少ない」とは、天ぷら屋で「海老が小さい」と文句を言うがごとき的外れな意見と思える。さらには、はたまた「種物のメニューが少ない」とか「辛味大根が辛すぎる」なんていう言いがかりレベルのレビューまであった。
・正直、私も関西の蕎麦屋についてはいくつも回ったというわけではないのが、しかし今までいくつか行った店の中では一番だった。
・「うまい蕎麦なのでこの店にわざわざ行って食べろ」とは思わないが(かなり不便な場所にあるし)しかし一部の低い評価@食べログに理不尽さを感じたので記録として書いておく。
・店を出ると駐車場待ちの車が長蛇の列。そこまでして蕎麦を食べに来るかね。開店前に来ておいて良かった。