2017年11月08日

長いぞ東京5泊6日日記(歌舞伎座昼夜と食いだおれ記録)

Pop is dead.
Pop is dead.■11/2
・往路、町山智浩「ブレードランナーの未来世紀」ほぼ読了。ビデオドローム、ブルーベルベット、ロボコップ、未来世紀ブラジル、ブレードランナーというタイトルが並べば買わざるを得ないが、買ってまで読む本か微妙。しかし買わなきゃよかったとも思わず、まずます面白かった。
・BigHornでAM1:30頃まで飲むが〆を食べ損なったので人生初の日高屋でラーメン

■11/3
・髪が伸びて実に不快なので、門前仲町の散髪屋で刈ってもらう。ハゲは最低でも月一回は散髪屋に行って髪を短く保つべきだと思うのだが、どうも面倒で放置してしまうのだ。

・その後、神楽坂の蕎麦屋「かりべ」へ。皮くじら、鯖の燻製でお酒(八海山)を一杯。皮くじらが脂っこくて実に良い。そして突き出しの蕎麦豆腐がとても薫り高い。
・これは期待できる、と思ったが案に相違して蕎麦は普通。不味くはないが名店の味とは言えず、これで一枚1,000円はない。比べる対象が変だけど、芦屋川・むら玄の方がうまいんじゃないかね。つゆは甘すぎず辛すぎないが、しかし奥行きの全くない味。これは「淡麗」あるいは「すっきり」というくくりで良く解釈することも可能だが、やはり少し物足りなさを感じる。
・あと強く違和感を持ったのが「青葱」を使っている部分で、蕎麦というのは東日本のものだと思うので「白葱」をよくさらして使うのが本格だろう。立ち食いそば屋なら青葱でもかまわないが、こういう蕎麦屋ではいかがか。山葵は凡庸で、卓上に七味はなし。薬味についてはこだわりがあるんだかないんだか、混乱する。
・つまみの器などには趣味があって良いのだが、そばの器は石臼をかたどった「民芸調」で悪趣味と言わざるを得ない。どうも統一性がないというか、良いんだか悪いんだかよく分からない蕎麦屋だった。家具も重厚で、これは好みだけれど私はやはり赤坂・砂場や浅草の並木藪みたいな清廉なインテリアが好きですね。ああいう空間で蕎麦を食べることに幸せを感じる。

マコックさんがTwitterで触れていたのでインド出身の芸術家、アニッシュ・カプーア展を見るべく、牛込神楽坂から明治神宮前へ。この間の経路は忘れたが、いったん大江戸線で新宿まで出て同線・青山一丁目、銀座線で表参道、千代田線で明治神宮前といった非常に非効率な乗り方をしたような記憶がある。GYREという商業施設内のギャラリーでタダ、つまり無料で見られたのだが、実に素晴らしかった。内臓を思わせるような樹脂製の立体、切り裂かれた臓物の中に滝が流れているようななまめかしい物体を、薄いガーゼのような布で覆った作品。極めてグロテスクな、正視すべきではないような物を、ガーゼの布目越しに覗く背徳感。ちょうど昨日、クローネンバーグやデビッド・リンチに関する文章を読んでいただけに、強くエキサイトメントを感じた。2017/11/26まで。

・その後、表参道から神保町へ出てSPINの写真展へ。出発する直前に招待ハガキをもらったので顔だけ出す。モデル本人が目の前にいるところでヌード写真を眺める、というのは不思議な感覚がある。性的な興奮とはまた別のように思うが。
・本を買い足そうと書店に入るが、岩波文庫の「怪談牡丹燈籠」(既に持っているかも知れない)と、谷崎潤一郎の評論集とか買ってしまう。軽いものが買いたかったのだけど東海林さだおの新刊タイトルが「猫大好き」では買う気にならない。猫は嫌いではないが「猫を出しておきゃあ売れるだろう」式の商売が大嫌いなので。

・神保町から九段下、都営新宿線で新宿まで出て、トロワグロのミートパイとブリオッシュを買ったあと中央線で荻窪へ。中央線のアナウンスは女性の声で「しんじゅくー」「おぎくぼー」「にしおぎくぼー」と妙に語尾を伸ばす。他の路線では「しんじゅくー」とは言わない気がするけど。
・荻窪で春木屋(AKIRAの春木屋じゃない方のラーメン屋の春木屋)の前や、その先の謎の窪地を眺めた後、開店とほぼ同時に「卯」へ。揚げ銀杏、かわはぎ、帆立と蟹のテリーヌ、海老とアスパラの春巻き、鰯の梅煮など食べる。一見「よくあるお洒落目の居酒屋」だが、テリーヌがあるとは。しかもうまいぞ。
・そしてちょっと驚いたのが春巻きで、一見普通の揚げ春巻きなんだけど、中身が生春巻き風、つまり海老、アスパラガスに加えて人参とか野菜の千切りが生で入ってる。これを揚げて出すという、不思議なメニューなんだけどこれがうまい。いや「う、うまい!」と感動するようなものでもないんだけど、中の千切り野菜が生でもなく、しかしゆで野菜でもなく、絶妙な感じで蒸されてるのがとてもユニークだった。これは天ぷら・近藤主人の近藤さんが言っていた「天ぷらは蒸し料理である」という言葉に沿ったメニューだなあ、と感心してしまった。

・荻窪から中央線+東西線で門前仲町に戻り、バー「C」へ。門仲でオーセンティック・バーというと僕はオーパとここしか知らない(パールオニオンがないのは瑕疵といえば瑕疵だが)
・だいぶ飲んだのだけど締めようと思ってリンガーハットに入り、しかし飲み過ぎていたのでビール一杯飲んで店を出るという馬鹿なことをする(記憶が飛んでいたが、翌日レシートを発見して判明した)

■11/4
・朝食に昨日買ったトロワグロのパンを食べるが不味い。二日酔いというわけでもないが昨日飲み過ぎ、疲れが出て昼過ぎまでゴロゴロする。
・14時に門前仲町を出て勝鬨橋経由で東銀座へ出る。昼食はゆで太郎の薬味そば(揚げ玉抜き)揚げ玉を抜くとさすがに物足りないかとも思ったが、茄子の素揚げが入ってるので油も少々ありながらさっぱりしていて良い。こんなもんでいいんですよ。ところでこのゆで太郎、椅子の座り心地が異様に悪いんだが「立ち食いそば屋なんだから立って食え!」というメッセージなのか。

・歌舞伎座上の売店で中村米吉の舞台写真、先月公演分10枚を買い占めたあと、歌舞伎座夜の部へ。

・今回の目的は忠臣蔵五段目・六段目、仁左衛門の勘平。これは行かなければいけない。仁左衛門が良いのは当たり前。幕切れの陶然とした顔は絶品で、連判状に加えてもらった歓びに加え、死に至って意識がもうろうとし、それによって快楽を感じているのではないか、と思える凄味があった。
・僕は個人的には秀太郎という役者があまり好きではないんだけど、というか仁左衛門の公演では「若くて美しい恋人役」でこの人が出ることが多くて、いくらなんでもそこに無理を感じてしまうんだけど、今回の一文字屋お才は絶品。勘平登場後のイライラした演技、細かい芝居が素晴らしい。そして名脇役、松之助が女衒の源六、この人がやり過ぎずに好演。「この家に連雀付けて背たろうて、残った空き地にぺんぺん草はやしたる」だったか、そんな台詞は江戸のバージョンではなかったように思う。「淀川に蓋ないねんど」や「尻の穴から手ェつっこんで奥歯ガタガタ言わせたろうか」的な、上方のタンカ、面白い。
・孝太郎のお軽、吉之丞のおかやは、以前見た菊之助のお軽、東蔵のおかやとは真逆。後者は「女の強さ」を強烈に感じる演技で、それはそれで一定の納得性があったのだけど、やはり本来は今回のような「女の弱さ」を表現した演技が正しいのだろう。全体的に整ったいい芝居だったが、与市兵衛役者だけがドヘタ。中村山左衛門という役者らしいが知らない。
・次の「新口村」藤十郎は引退して後進の教育に専念すべきだと思う。「大石最後の一日」は幸四郎が良いのは当然だけど、真山青果の「理屈のぶつけ合い」に女を入れると盛り上がらないなあ、という印象。金太郎は、歌舞伎役者の通過儀礼みたいなところがあるけど、ちょっと難しい時期に入った感じ。あとこういう真面目な芝居で澤村由次郎に台詞を与えるな、と思う。あの役者一人で芝居がガタガタになる。今月の芝居であれば鯉つかみ辺りに出せばいいのに、なんでこういうシリアスな出し物で使うかね。

・終演後、オストレアでシャンパンを飲んで牡蠣を7つ。今回は特にアタリなし。しかし仙鳳趾(せんぽうし)と的矢牡蠣の臭くて不味いこと。この店の仕入が国産牡蠣を苦手にしている可能性も大だが、この店で国産牡蠣がうまいと思ったのは「丸えもん」という物のみ。毎回うまい「クマモト」という外国産の牡蠣、本日は残念ながら入荷なしとの由
・続けてアモンティリャードにエスカルゴ、以上で7,000円くらい。やっぱり結構高くつくな。
・日比谷まで歩いて茅場町経由で門前仲町へ戻る。帝国ホテル周辺は至る所に二人組の警官が立っており、後で知ったのだがトランプが泊まっていた模様
・オーパでミモザ、バンブー、ワイン。カルボナーラで締める。しかしこの店でもカルボナーラにクリーム使うのか。本格的なローマ風カルボナーラを出す店ってのは無いのかね。

■11/5
・ほぼ御飯と味噌汁だけの朝食。「ブレードランナーの未来世紀」一章だけ読み残していたターミネーターの章を読み、読了。

・茅場町経由で東銀座に出て今日は歌舞伎座昼の部。一幕目「鯉つかみ」の感想は渡辺保の評に同じ。ラストありきであとは全てつけたりであって、退屈なことこの上なし。
・昼食は歌舞伎座裏の小諸そばで豚肉入りの蕎麦。ここも幕間の時間は異様に混むが、券売機にお金を入れてから注文を考えるバカ女あり。小諸そばは快楽亭ブラック師匠推奨ということで初めて入ってみたが、麺が柔らかすぎるしイマイチ。嵯峨谷の方がうまいんじゃないのかな。
・次の「奥州安達ヶ原」は何がなにやら分からない芝居。吉右衛門、東蔵、歌六、雀右衛門、又五郎と非常に堅い配役で、ものすごく重厚なんだけど何が面白いのか全く分からない。しかし受ける受けない関係なく、こういう演目があってこそ「大歌舞伎」なのだと思う。
・最後の三千歳直侍は、やっぱりさすがの菊五郎。以前何年か菊五郎劇団の国立劇場での正月公演を見て、あれつまらないんですよ、菊五郎が変にふざけたりして。あれをいくつか続けて見たもんだから「もう菊五郎はいいや」としばらく思っていた。しかし去年の忠臣蔵で菊五郎の勘平を見て「あ、やっぱりこの人凄いわ」と当たり前のことに気付いた。今回の芝居もいい。蕎麦屋のシーンはやっぱり絶品で、菊五郎の直侍は歳を感じさせない粋な色男っぷり、蕎麦屋を出るときに一言「世話になったな」と戸を閉める、このかっこよさ。東蔵の按摩も良いし、蕎麦屋の夫婦(家橘、斉入)がまたズッポシはまってて良いねえ。薄暗い照明のもとで展開されるこの場の静かさ、蕎麦の香りが漂ってくるような雰囲気は絶品。ここが良すぎて後半はあまり記憶になし。

・伊東屋を覗いて一旦門前仲町に戻って着替えたあと再び銀座へ。GINZA SIXでキャビア、それも映画「バベットの晩餐会」に出てきた「ブリニのデミドフ風」らしきものを出す店があって以前から狙っていたのだが、店頭に行くとメニューから消えていた!これは今回の大ショック、最悪の展開。あまりのショックに門前仲町に戻るが、日曜なので開いてる店が少ない。こういう時はここだ、とSORAYAに入ってワインとつまみを少し。その後、てんやでビールと天ぷらのセット、追加で牡蠣、舞茸、鱚(メニューでは「白身魚」となっていた)でおなかいっぱいに。これで1,010円ですよ、タダみたいなもんでしょ。
・予想外に腹がふくれたのでちょっと休憩したあとチェーンのスパゲティ店「ポポラマーマ」へ。知らなかったけどここワイン飲み放題じゃん!得した気分でワインを飲みながら本を読んで過ごす。バイトリーダーみたいなのが新人に指導している内容がテキトー過ぎてイライラする。締めはスパゲティにするが、なんかラーメンみたいな麺だった。

■11/6
・仕事。昼食を無駄にする。夜は門前仲町で食事とバー1件。その後BigHornに行こうかと思ったが早じまいしていた。仕方ないので缶チューハイと缶ビールを飲んで寝る。

■11/7
・仕事。昼食は和久傳のむしやしない。ほぼ毎回、鯛の黒寿司を食べているが今回、最後の鯛の一切れがうまかった。個体が違ったのか、あるいは「最後の一切れだから」と味わって食べたからおいしく感じたのか、いずれかは知らない。
・移動中「それでも日本人は戦争を選んだ」読むが、読了には至らず。しかしこれ一回通読したあと年表にしないと全体像の理解は出来ないな。
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