
・これらは「ちまたで多く売られているが、意外にも『気に入った物』が入手しにくい道具」である。もちろん、個人的な感覚だが。
・箸の専門店は最近多く、また夏になると百貨店では扇子売場が出来たりする。傘は百貨店の1階で年中売られている。
・しかし、その中で「これなら許容できる」と思うようなデザインの物に、なぜかなかなか出会わないのですね。
・どれなら許容できるか、と言うと「許容できないディテールを持たない物」です。
・これは「どんな物が好き」と訊かれて「嫌いではない物」と答えるのと同じですが、しかし実際にそうなのだから仕方がない。
・例えば箸であれば、角が丸い物、六角形・八角形の物、持ち手側が極端に重い物、漆が一部(例えば持ち手の部分だけ)に塗られている物、あるいは色が途中から切り変わっている物、そもそも黒・茶以外の色の物、絵や模様が描いてある物、ビーズのような飾りが埋め込まれている物、飾り彫りがしてある物、あと先っぽに滑り止めが掘ってある物!これら全て、私には許容できない。そんな醜い箸で物を食べたくない!と思ってしまう。
・しかし例えば百貨店の箸売り場に行っても、そんな箸ばっかりなんですね。さすがに箸専門店に行くと「これなら許せる」という物が何膳かは見つかりますが。
・そういったわけで私の家にあるのは透明な漆塗りの利休箸に、先端の細い黒檀の箸、それに市原平兵衛商店の煤竹箸といった感じです。
・傘となるとまたこれが難しい。箸と比べると私の要求事項は少なくて、
1.持ち手が木または革巻きで、かつ持ち手に過剰な主張がないこと
2.傘布は黒または濃い紺色で、表面・裏面共に模様が印刷されていないこと
3.廉物のジャンプ傘のようなチープな形状のボタン式でないこと
・これだけの要件を満たす傘が見つからないものなのですね。そもそも男物の傘売場というのが、女性用と比べて圧倒的に狭く品揃えもないので、探すのが難しい。
・仕方なく妥協して買った、持ち手が樹脂+革張り、傘布の裏面にうっすら模様ありというのを使っている。
・しかし箸も傘も「まあこれなら使えるか」と妥協できる程度のものは売られている。本当にないのが「扇子」ですよ。扇子には明確な要求事項はない、そもそも趣味の小道具みたいな物なので、見た目でOKかどうか。そういう曖昧な感覚で売場を見ても、どうもみっともない物ばかり売られている。
・で、つまりこれは「世の中の男は、ほぼ全員、私の目から見れば『みっともない扇子』を使っている」という事ですね。恥ずかしくないのかね、皆さんはそういうお道具を使っていて。まあ、恥かしくなどはないんだろうな。ああそうですか、という事であります。
・で、これは結局、普通の店で買うのを諦めた。今使っているのは和歌山の南方熊楠顕彰館で売られていたものです。500円。
・さらに、で、実は欲しい扇子というのがあって、それは府中の神社で年に一度、お祭りの時にだけ売られる「からす扇子」というものです。紙に墨一色で烏が描いているだけのシンプルさが良い。しかしそのためだけに東京に行くというのもなあ、と思っていたら通販でも買えると知った。去年までは現地に行かないと買えなかったはずだったのに、うれしい対応です。