2019年01月31日

劇団柿喰う客「美少年」感想

Pop is dead.
Pop is dead.・劇団・柿喰う客の「美少年」を見た。
・出演は4人の役者(男)のみ。セットなし。衣装は4人一緒で衣装変えもなし
・この劇団は開幕時に「このお芝居は○○分です」と宣言するのが良い。今回は60分、短い!

・開幕から途切れなくハイスピードでしゃべりまくる。これが60分続くのはきついなあ、と思っていると、突然中断「今、何分だ?」「7分です」「あと53分続くのか!」という台詞
・この演出は凄いと思った。まず舞台と観客の距離感を絶妙に表現している点、それに何より「今何分、後何分」とマイルストーンを確認する事で、観客の集中力を持続させる点。特に後者に関しては今までの芝居では見たことのない手法で、感心してしまった。
・この「今何分、後何分」のやり取りはさらに数回繰り返され、うまい具合に観客をコントロールしていた。世の中にコンテンツが溢れ、YouTubeなどなど短い時間で楽しむ娯楽が増えてきた現代では、こういう工夫が大切なのだろうと思う。60分という短い時間に早台詞で情報を詰め込んで芝居として成立させているのも、その工夫の一貫だと思う。

・一人何役もこなし、台詞も早いので混乱してくるが、同じシーンの繰り返しなどを随所に挟むことでなんとかついてゆける(でも40代のおじさんにはちょっとしんどい芝居だった。台詞は往年の遊眠社よりもずっと早く、言うなればウーマンラッシュアワーのような感じだ)

・芝居の筋よりも「観客の目をいかに舞台に向けさせ、その集中力をいかにつなぎ止めるか」という工夫を盛り込んだ仕掛けに感心してしまった。
・肝心の内容は文字通り美少年の話であって、ゼウスとガニュメーデースになぞらえた美少年誘拐事件が本筋。テーマは「逆・ドリアングレイの肖像」と言うか、そういう感じ。主人公(美少年)+3人という人数構成からは「マクベス」の「きれいは汚い、汚いはきれい」という言葉も想起される。
・テーマとしてはそんなに深遠な感じはしないけど、薄っぺらいわけでもない。そしてスタイリッシュなのは相変わらず。

・以前、この劇団の公演を見たときにはスタイリッシュさばかり感じていたが、今回は芝居のフォーマットとしての見事さに感じ入った。終演後、カーテンコールなどなくスパッと終わる所も良い。

・加藤ひろたかという役者が女を演じるときの背中から腰、足の曲線はエロ過ぎると思った。奥さんは田中穂先という役者が気に入ったようだ。
・蛇足だが、観客は随分笑っていたが、私にとってはそんなに笑える芝居では無い。ただ「片岡鶴太郎」には声を出して笑ってしまった。
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