2019年05月02日

処女小説「サボテンにクリーム」(解説付き)

Pop is dead.
Pop is dead.・できた!

サボテンにクリーム - 小説家になろう
「小説家になろう」の規約は結構厳しく、この作品がR18認定されたので上記からは削除、こちらに直接投稿することとしました。

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「あー、のどかわいた」
 彼女はシーツを跳ねのけてまっすぐ冷蔵庫まで歩き、ペットボトルに残っていたミネラルウォーターを飲み干す。
「あっつ!」
 多分、わざとらしく手のひらで顔をあおいでいるんだ。
「だったらクーラー入れればいいのに」
 僕はうつぶせになって、彼女の方を見ずにつぶやく。
「うるさいなー」
 シーツをはがされた僕は、ほかにすることもないので彼女に連れられてバスルームに入り、二人で冷水のシャワーを浴びる。
「つめたっ!」
 熱いの冷たいの、うるさい子だ。水なんだから当たり前じゃないか。
「きもちいいーねー」
 返事をする代わりに口で彼女の言葉をふさぐ。これで水音だけになった。水の音を聞いている時間が一番だ。

「砂漠でね」
 キスが終わった途端にまたおしゃべりが始まる。少し彼女の目を見る。セックスの最中以外で彼女の目を見るのは今日二度目だな、と思う。
「砂漠でさ」
「うん」
「ラバなんかに乗ってさ」
「ラクダじゃないの」
「そか、ラクダか。ラクダに乗って旅しててさ、飲み水がなくなって、ほんとに死んじゃいそうになった時、どうすればいいと思う?」
「スリー・アミーゴスの話?それともアラビアのロレンス?」
「なにそれ、知らない。だから、どうすればいいと思う?」
「うーん、オアシスを探すとか、そういうこと?」
「そんなの、探してる間に死んじゃうじゃん。違うよ、サボテンだよ」
「なに」
「サボテンをさ、食べるんだって」
「あー」
 なるほど、と思いながらもう一度、水音に耳を澄ます。水を出しっぱなしにしながら砂漠の話か、こういうの植民地主義って言うんだっけ、違うか。と考えていると彼女はキュッと栓を締めて、一人で部屋に戻ってしまう。
 僕も我に返ってバスタオルを取る。

 部屋に戻ると彼女はもう下着を着け終え、パンティストッキングの位置を調整している。
「ちょっと待ってね、すぐ済ますから」
 パンティストッキングというのは、ああいうふうに履かないと位置調整ができないものなのだろうか。だとしたら、どんなにきれいな女優やアイドルでも、パンティストッキングを履いていたら、それすなわち「ガニ股になっていた」と考えて差し支えないのだろうか。
 そういう事を考えながらテレビを見てたら興奮できるかな、などとつまらないことを考えながら身支度をし、ソファに座って彼女の後姿を眺める。

「だからね」
 ヘアスプレーをかけた髪の毛にブラシを入れながら、彼女が突然いう。
 僕は、ガラスのテーブルに頬杖を突いたまま黙っている。
「だから優しいんだよ、本当は」
 女の話には脈絡というものがない。ジャンキーが書いた小説のようだ。
 僕は少し腹を立てて、彼女に聞こえないように静かに息を吸い、溜息をつく。
「優しいでしょ」
「なにが?」
「だから、サボテン。聞いてた?」
 聞いてたよ、男は、女が思ってる以上にちゃんと話を聞いてるんだよ。サボテンかよ、さっきの話の続きかよ、だったら主語つけろよ。
 ちゃんと「だから『サボテンは』優しいんだよ、本当は」と喋れよ!
「トゲあるけど、ほんとは優しいんだよ」
「そういうの、優しいっていうのかね」
「優しいんだよ。てゆうか、トゲだらけなだけで、誰の役にも立たなかったら、存在価値なくない?はい、準備できたよ」
 僕は立ち上がって、なんとなく釈然としない気持ちで彼女に軽くキスをする。
 彼女は何かに納得したような表情を見せてから立ち上がる。

 ホテルを出て少し歩き、ビルに入る。この中にレストランがあるのか疑わしいような、愛想のないビルだ。
 最上階に向かうエレベーターの中で、彼女はすました顔をして僕と目も合わさない。怒ってるわけじゃない、いつものことだ。

「だって、その方が料理に集中できるじゃん」
 たしか、三回目にセックスをした後に彼女が言った。いや「たしか」じゃなく、三回目の時に言ったんだ。
 その日は神楽坂の小さな店でおそろしく旨い四川料理を食べた後、理科大の裏にある静かなホテルで夜と朝、二回セックスをした。ホテルに向かう道すがら、二人はずっと欲情していて、坂道や階段をキスしながら歩く危なさと楽しさをあの時、初めて知った。

 朝、起きてすぐに歯も磨かずしたあと、彼女が言ったんだ。
「食事した後にセックスするのって、めんどくさくない?」
「え、普通だと思うけど」
「そか。でもさ」
「うん」
「私たちが会う時って、セックスしたい時だよね」
「まあ」
「だったら、まずセックスしてから、なんか食べ行った方がよくない?」
「うーん」
「だって、食事するのが目的じゃないんだよ、セックスだよ目的は」
「……」
 悲しいような気もするし、しかし悪い気もしない。
「私はさ、『てんや』でいいんだよ、食べるだけだったら」
「『てんや』って……」
「いっつも美味しいとこ連れてってくれるけど、食べるだけだったら『てんや』でもいいってことだよ」
「でも『てんや』って……」
「うるさいな、てんや、てんやって」
 お前が言い出したんじゃないか、と、この時はじめて彼女に憤りを覚えた。
「てんや、てんや、てんや、てんや……」
 彼女が僕の口を強くふさぐ。寝起きの口が臭う。でも、どういう訳だか、今までのキスの中でいちばんおいしかった。彼女の味がした。

 エレベーターが止まる。
 僕が店の扉を開け、彼女が入る。
 窓側の、東京タワーが見える席に案内された。

 アミューズは、どういうわけかラムチョップ。
「おかしくない?」
 彼女が言う。
「まあ、たしかにおかしいね、アミューズにラムチョップは、おかしい」
「だっていきなり肉だよ?大腸がんになっちゃうよ」
 さすがの僕も小さな声で叱る。
「ならないよ!店の人に聞こえるよ!」

 次が、大葉と茗荷と、セロリのサラダ。少し甘みのあるコリアンダーのドレッシングがうまい。
 けど、彼女は青白い顔をしている。
「私、これ嫌い。苦い」
 わかった。野菜嫌いなのはわかってるから、僕が全部食べるよ。

「苦いでしょ、毒なんだよ」
 だから、店の人に聞こえるって。そんなこと言わなくていいよ、いちいち。
「だから、トゲのないのは食べちゃダメなんだよ」
 なんの話だよ。
「トゲのない奴の方が食べやすいじゃん」
「なに?」
 たまらず訊く。
「怒ってる?」
 怒ってはいないよ、でも怒ってるよ。
「怒ってないよ。なにトゲって」
「だから、トゲのない奴は危ないんだよ」
「だから、トゲって?」
「なに、聞いてなかったの?サボテンだよ」
「あー」
「聞いてなかった?」
「いや、聞いてた。わかった」
「だから、トゲのないサボテンがあるんだけど、それは食べちゃダメなんだって」
「なんで?」
「なんか、死んじゃうみたいよ、砂漠の真ん中で」
「なんで?」
「よくわかんないけど。でも、トゲのないのはニガいんだよ」
「苦いんだ」
「そう、見た目もまるっこくて可愛いの。それでトゲもないから食べやすいでしょ。でも食べちゃうとニガくて、あ、そうだ幻覚が見えるんだって」
「幻覚か」
「そう。で、砂漠の真ん中で頭がおかしくなって、死んじゃうんだってさ」 
「そうなんだ」
「だからニガいのは毒なんだよ。野菜もそうだよ」
 わかったよ、だから俺が食ってるじゃんか。 

 二人分の皿が下げられて、ムールが出る。
 ムール貝か。いまいち好きになれないな。

 両親の実家が漁師町にあったので、海辺でムール、というかカラス貝はよく見た。しかし食べた事はない。カラス貝というのはたいてい漁港のコンクリートに打ち捨てられているものだった。当時はあんなもの、誰も食べなかったのだ。
 今ではこじゃれたレストランでやたらとムールを出したがるが、僕にはどうも「どうせ捨てるものだろう」と思えてしまう。

 彼女も、つまらなそうな顔をしながら貝殻を使って身を取り出している。
 そう言えば、彼女も漁師町の出身だ。

 だからか、と気付く。

 漁港のある町には、潮風の具合によって海のにおいが充満することがある。様々な海の生物、ことにそれらの死骸から出るにおいの混ざった風が、静かな波音の中、滞留するのだ。
 その悪臭の中にあって、幼少期の僕は、妙な充足感を得ていた。腐敗臭の中に、子供ながらに「なまめかしさ」のようなものを感じ取っていたのだ。

 彼女も同じような子供だったに違いない。

 メインは赤身肉のグリル。
 血の滴る肉片を口に入れて、彼女はごく小さな声でささやく。
「うまい……」
 言葉遣いが乱れたことに気付き、少し口に手を当てたあと、僕に話しかける。
「やっぱり、400グラム1000円のステーキとはわけ違うね」
「400グラム?何の肉、それ」
「ギュウだよ、牛肉。秋葉原にあるの。あたし好きでたまに行くんだけど、やっぱり所詮B級ね。所詮ね」
 400グラムか、僕の歳では無理だな。その大量の肉を想像すると、胸が一杯になる。
 それでもなんとかミディアム・レアに焼かれたフィレ肉を胃の中に収め、一息つく。彼女はもうとっくに食べ終えて、パンなんかおかわりしている。

 デザートはキャラメルのアイスクリーム。彼女に二人分食べてもらい、僕は残ったブラン・ド・ブランを少しずつ飲む。

 店を出て、エレベーターの「閉」ボタンを押す。
 その瞬間、彼女がこっちを見て、ほんの少しだけ口を開ける。10階から1階につくまで、キャラメル味のキスをした。
 
 彼女を地下鉄の駅まで送り、一人でホテルに戻る。やっぱり二人で一本は多すぎたかな。彼女はほとんど飲まなかったので、僕は結構酔っている。ベッドに倒れ込み、しばらく天井を見ながら考えたあと、うつぶせになる。

 白いまくらから、彼女の臭いがする。大きく息を吸い込む。

「あたしも好きよ、あなたのにおい」
 僕が彼女に好意を告げたときに、彼女はそう応えた。そう言われて初めて気づいた。僕も彼女の「におい」に惹かれたのだ。
 初めて肌を合わせたときに感じた、コンデンスド・ミルクのような、あるいはクミンのような、そしてあの漁港を思わせるような、なまめかしいにおい。そこにごく弱く、柑橘系の香水が重なっている。混然一体となった、その「におい」に僕は陶然となっていた。

 何度か彼女に会ううちに、好きになっていった。その時には、彼女に恋する理由を自分で勝手に考え、無理やりに理屈立てようとした。
 可愛いから、体がきれいだから、歳が18歳も若いから、性格がさっぱりしているから、嘘のない性格だから……
 そうじゃないんだ。いや、そんな理由も確かに大事なのだけれど、まず第一に彼女の「におい」が好きだったんだ、僕は。

 その時にSNSの連絡先を交換して、次からは会うたびにホテルでセックスをするようになった。

 いつも、部屋に入るとすぐ行為になだれ込む。
 シャワーは相手のにおいを洗い流してしまうから以ての外だ、クーラーもにおいを弱めてしまうので、今の季節でもエアコンはつけない。
 おたがいのにおいを嗅ぎながらキスをし、からだ中を指と舌で愛撫してから、洗っていない相手のものの香りを確かめた上で、それらを舐め合う。
 挿入してから僕は、彼女の腋に鼻をうずめる。
 僕がいきそうになると、彼女は決まって「私を穢して」と、ささやくように言う。いつも僕は切ないような気持で、彼女の体に、あるいは口内に、穢れた液体を注ぐ。
 そして彼女は、そのクリームを飲み込むときに決まって一言「くさい」というのだ。それが好きなくせに。
 そのあと汗まみれの体を冷水で流して、二人で食事に出かける。

 まくらの臭いをかぎながら、今までの、そしてさっきのセックスを思い出す。彼女はまだ地下鉄に揺られている頃だろうか。

 セックスをしてから、シャワーを浴び、さらにその後に食事に行く。普通の恋人同士なら、順序が完全に逆なんじゃないか、と思う。でも、順番なんてどうでもよかった。

* * * * *

 その週末、配偶者に請われて園芸店に出かけることになった。ひどく暑い温室にいっぱいの観葉植物に囲まれながら「食べられない植物」に興味を持てない僕は、手持ちぶさたでぶらぶらするより他ない。
 ふと、多肉植物の群れが目に入る。サボテンか。
 そういえば、と思って探していると、すぐに見つかった。

 「表面が乾いた草団子」のようなそのサボテンには、たしかにトゲは一本もなかった。その代わり、ところどころから綿毛のようなものを吹き出している。
「なにそれ、かわいい」
 僕の肩越しに、奥さんが言う。
「でもこれ、観葉植物としてどうなの?成立してる?」
 なにか後ろめたい感じがして、買いたくない風を装う。
 実際、どうもこのサボテンには可愛げがない。
「成立してるよ。かわいいもん」
 早速一鉢取り上げて、カゴに入れてしまった。
 その日から、私と妻とサボテンの三人暮らしが始まった。家の中に彼女がいるような気がして、不穏な気持ちになる。

* * * * *

 なるべくサボテンと目を合わせないように生活している。あれ以来、彼女とは会っていない。
 それどころかそのうち、メッセージが来なくなった。彼女はまめな方では全くないけれど、それでも今までは、日に一度はメッセージを返してくれていた。
 いつからか、それがぱったり途絶えた。
 一日おきに「元気?」とか「大丈夫?」と送ってみるが、既読にはならない。

 嫌な予感がして、彼女が在籍している店のサイトを見てみると、そこから彼女のプロフィールが消えていた。

 初めて店で会ったときから、彼女は僕に色々なことを話してくれた。生い立ち、恋愛経験、家族のこと趣味のこと、それに住んでいる場所まで。風俗店で働いている女の子としては赤裸々すぎるんじゃないか、とこちらが心配になるほど、なんでも自分からしゃべってくれた。
 今思うと、彼女は自分の性癖と同じ「におい」を僕に感じ、だから心を開いてくれたのかも知れない。

 僕も自然とオープンになり、好意を持つようになった。

 その後も関係が続く中で、彼女のことなら何でも知っているような気持ちになっていた。
 しかし今、自分が彼女の電話番号すら知らないという事実に直面している。

 あまりに無防備で明け透けのように見えた彼女だけれど、その実、決して僕を「ある範囲」から近づけてはいなかった。
 ふと、最後に会ったときの会話を思い出す。サボテンか、もしかしたら、実はトゲだらけだったのだろうか。

 その日から、彼女のすべてが疑わしく思え始めた。彼女が話した彼女自身のことも、実はすべて嘘だったのかも知れない。いや、嘘だったに違いない。実に見事に虚構の人生を築き上げたものだ。

 そして、僕の心は硬くなった。
 
 ある日、何も手に付かないような気分になり、スマートフォンの画面を見ていた。SNSを立ち上げてみる。そこでは、時間が止まってしまっていた。
 すると突然、全ての僕のメッセージが既読になった。思わず目を見開く。

 すぐに彼女から、こんなメッセージが届いた。

「困惑してると思って一度だけメッセージ送ります。いろいろあって、もう会えなくなりました。ごめんね。あたしは大丈夫だから」

 慌てて平静を装い「いろいろあったのか」と返信したが、それが既読になる事はなかった。

 困惑か。たしかに困惑していた。しかし、こんなことなら困惑し続けていた方がよかった。
 彼女の肉体、声、言葉、そしてにおい。すべてが欲しい。今までずっと思っていたことをもう一度念じてみる。でももう、それらは僕の手のひらからこぼれ落ちてしまった。
 困惑の後に残ったのは、もう二度と手に入らないものに対する渇望だ。

 家に帰り、薄暗い部屋でしばらく考えた後、僕は傘をささずに近くのコンビニまで出かけた。キャラメルのアイスクリームと、ミネラルウォーターを買う。
 帰り道、雨が急に強くなって僕の眼鏡に打ち付いてくる。立ち止まり、眼鏡を胸ポケットに入れた後、たまらなくなってミネラルウォーターの蓋を開ける。
 半分ほどの量を一気に飲むが、喉はまだ渇いている。

 部屋に戻り、急いで服を着替えてから冷凍庫のタンカレーを取り出す。

 トゲのないサボテンを少し見つめた後、つかんで引き抜いた。あまりにあっさりと抜けてしまい、土が周囲に散らばる。
 その太い根っこをつかんで、かじりつく。

 苦い。彼女の言った通りだ。
 彼女は僕に嘘をついたことがない。彼女の言うことは、常に本当だった。
 だから僕は、トゲのないサボテンは苦い、という彼女の言葉を疑ったことはなかったし、確かに苦かった。

 味を中和させるためにアイスクリームを口に放り込む。最後のキスの味がする。

 サボテンとアイスクリームを食べ終わった後、バカラのショットグラスでタンカレーを三杯あおり、そのままベッドにもぐりこんだ。

 固く目を閉じる。僕にはもうなにも手に入らない、と思いながら。

 真っ暗な中で、雨の音が聞こえる。世界が洗い流されている音だ。
 そのまま、何時間たったのだろう。目をつぶっていても外が真っ暗になっていることが分かる。

 まぶたの裏側に、なにかが見える。幻覚ではない、もっとはっきりとした影だ。
 ピンク色のような、藍色のような、あるいはベージュのような強く明瞭な光が見えた。
 その光は、しっかりとゆらめき、ぼんやりとした閃光を放ったあとに、長い時間をかけて、ひどく明るいまま、あっという間に消え去っていった。

 あれは、確かに彼女だった。

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【解説】
(解説というか、どうやって何もないところから話をひねり出したかという経緯の記録)
・対話メインの幼稚なケータイ小説みたいになっちゃったけど、とりあえず書き終えて公開することを優先した。
・後半の展開が急すぎて説明不足のような気もしますが、とりあえず初稿ということでご容赦下さい。

・そもそも小説なんかを書くきっかけは、久しぶりに旧友(めいろさん)と会って彼女から「小説を書け!」と言われたこと。「僕には創作は出来ないんだよ」と言っても「そんな事を言ってないで書け!」の一点張り
・じゃあとりあえず、出来るか出来ないか試してみるか、と思った。

・しかし書きたいストーリーなんて何も思い浮かばない。
・そういう時には「片岡義男スタイル」だ!と思って、とりあえずランダムに二つ、言葉を選ぶことにした(「片岡義男スタイル」というのは私が勝手に考えて使ってるだけです、念のため)
・まず、めいろさんが好きなバンド「CACTUS」から「サボテン」と一つ決まった。メモに「サボテン」と書く、それから、ちょっとエロい事も書きたいな、と思って「クリーム」と書き足した。「サボテンとクリーム」いや、エッチなことを書くなら「サボテンにクリーム」か。
・よし、これでタイトルは決まった。もう完成したようなものだ。

・タイトルが決まったら、それに沿って自分に何が書けるかを考えて、それを文字化するだけだ。
・中島らも好きとしてはペヨーテに触れずばなるまい。メモに「とげのないサボテン」と書き足す。
・エロい事を書くのなら、そこに女の子と食べ物に関するエピソードを絡めた話になるな。

・そこまで考えて、結末のことを考えずにとにかく書き始めた。
・しかしやはり、書き出しというのが難しい。どうもこの、考えて書いてしまうと、書き出しに気取った感じが出るような気がして、女の子の台詞から書き始める。そうすると、中途半端なケータイ小説のようになってしまった。これは今後、創作するときの反省点になると思う。

・書いてるうちに、水の音や渇きといったディテールを付け加えていった。ここら辺はかなり適当

・出てくる店は、神楽坂・梅香と、芝・ワカヌイ。それにてんやと秋葉原・肉の村山

・「てんや、てんや、てんや、てんや……」というのは、めいろさんも好きなシティボーイズ「丈夫な足場」の「ロールキャベツ、ロールキャベツ……」から。

・中盤はワカヌイのディナーメニューを見ながら、デッチ上げた。特にムールのくだりなんかはメニューを見ていて思いついた感じ(正確にはグリーンマッセルとなっているけど)
・「クリーム(精液)」っていうモチーフもあることだし、臭いフェチの話にしようとは思ってたんだけど、ここで偶然、漁港の臭いを原体験として持つ男女という設定が出来た。
・あ、そうだ臭いフェチについてはめいろさんと話してたときに「好きな子とキスするんだったら、口が臭くても臭くないでしょ」と言われて「いや臭いものは臭いよ、でも好きだとそれもおいしく感じるってことでしょ」と返したことが元ネタだ。
(ちなみに臭いフェチに関連して映画「髪結いの亭主」について触れようかとも思ったけどダラッとする感じがしてやめた)
・キャラメル味のキスというのも、メニューを眺めていて思いついた。

・今回の小説は、めいろさんと「ワカヌイのメニュー」のおかげで出来たようなものだ。
・あと、途中obacanさんにも見てもらい、その時にもらった意見を元にほんの少しだけ手を入れた。

・その後、しばらく退屈な説明が続く。実際の作業としては、食事が終わったところで、サボテンを購入するくだりと、終盤を書き上げた。そこから、これもちょっと説明的で無味乾燥なセックス描写(食事の後から、サボテンを購入する前まで)を書く。
・なおキスが多いのは、個人的な趣味の問題です。

・それ以外の箇所(サボテンを購入した後から、彼女の最後のメッセージが来るまで)についてはどうやっても説明的になってしまうことが分かっていて、書くのが苦痛だった。
・ただ、ここを書かないと当然ながら書き終えることが出来ないので、しばらく(中一日)置いてから書き始めた。
・彼女を風俗の人にしたのは、その方が出会いの描写が省けるから。ただそこを強調しても話が変な方向に引っ張られる気がしたので、いかにさらっと触れるかということは考えた。「風俗ではまずシャワーを浴びてからプレイをしたので、その時は『逆』じゃなかった」という事も書こうかと思ったが、しつこい感じがしたのでやめた。

・「実はトゲだらけだったのかも知れない」という一言は入れるべきか否か結構迷ったけど、まあ入れておいた方が分かりやすいかと思って入れておいた。

・終盤は、我ながらあまり良い出来ではないなあ、と思いつつも「サボテンにクリーム」というタイトルの小説を終わらせるのであれば、私としてはああいう結末しか思い浮かばなかった。

・告白してしまうと「彼女」が「トゲのあるサボテン」なのか、あるいは「ペヨーテ」なのかについては自分でも整理せずに書き終わった。
・書き終わってから考えると「トゲのあるペヨーテ」なのかも知れない。
・人を寄せ付けないのは彼女の「優しさ」でもある。砂漠を旅する「僕」が彼女を食べて死んでしまわないように、トゲを持っているのだ。しかし最終的に僕は彼女と一体化する、そういう話なのかな。自分で書いておいて分かってないので、解説にもならない。

・ちなみに書いている時になんとなく頭の中にあったのは、村上龍「料理小説集」と、永井荷風「つゆのあとさき」あと主人公がさっきと真逆のことを言い出す箇所ではサリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」を思い出してた。

・最後に、出てくる「僕」というのはまんま私ですが、女の子についてはほぼフィクションですね。

・補足:今も少しずつ手を入れています(2019/5/10一旦完成)

* * * * *

・後日談。奥さんに「友達に言われて、小説を書いた」と言うと「私も昔、言ったよ『小説書いたら?』って」と言われた。怒られた。言われたっけ。多分その時、僕は「創作は出来ない」と言い、奥さんは「そうか」と引き下がったんだ、多分ね。そういうことを思うと、たまらない気持ちにはなる。
posted by LSTY | Comment(0) | 創作 | このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク
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