2020年12月16日

快楽亭ブラック師匠を相手取った損害賠償訴訟について

Pop is dead.
 一応立場をはっきりさせておきます。
(結論だけ知りたい方は下の方へスクロールをどうぞ)

 私はもう10年来の快楽亭ブラック師匠(現在は「被告福田」という芸名で活動)ファンです。その破天荒な生き方にも魅力を感じましたし、何より古典しかも人情噺に関しては相当の力量を持った噺家だと見込んで、大須演芸場に通っていました。

 付け加えると、芸歴が長いだけあって顔が広く、落語会のプロデュース能力がすごい。師匠の会で見られた芸人と言えば、月亭可朝師匠、立川左談次師匠、桂雀三郎師匠、立川談之介師匠、鈴々舎馬るこ師匠、それにテントさん、元気いいぞうさん、鳥肌実氏、大本営八俵さん、坂本頼光先生
 すでに鬼籍に入られた方も居ますが、素晴らしい芸に接することが出来たのはブラック師匠の人脈のお蔭だと思っています。
 亡くなった月亭可朝師匠の高座を見た人ってどれくらいいるんでしょうか?最初は下世話な話から入りながらも、落語自体は洗練されつくし、枯淡の極みといった風情でした。

 というわけで、ブラック師匠の芸に関しては相当リスペクトしています。先日聴いた「牡丹燈籠・栗橋宿」も良かった。本人評価はまだまだ、という事でしたが、私は素直に良い高座だと感じました。

 こっから本題

 今回、ブラック師匠が名誉棄損およびそれに基づく損害賠償の罪で訴えられました。

 原告は元弟子(現在は廃業)快楽亭ブラ坊の交際相手(彼女)です。巷では「元弟子が師匠を訴えた」という言説が飛び交っていますが、そうではなく、一般人が芸人を相手取って訴訟を提起した、ということになります。

 経緯は要約すると「快楽亭ブラック師匠が、YouTube配信している高座の中で、ブラ坊の彼女について性的な侮辱発言をした」という事です。その内容は、クローズドな場所で、ブラ坊自身が某女性芸人に漏らした一言ですが、ブラック師匠がそれを不特定多数に対して喧伝したことが訴訟の発端です。

 ここからは私の推測ですが、YouTubeを見ていたブラ坊の彼女(原告)が、ブラ坊自身に詰問、彼は謝罪したが、原告は特定少数しか知り得ない侮辱的発言をYouTube(無料配信)上で不特定多数が閲覧可能な状態にしたブラック師匠にも直接謝罪を求めた。恐らくブラ坊は止めたと思うんです。が、原告を止められなかった。そこでブラ坊からブラック師匠に電話をしたところ「俺は関係ねえ、そっちで処理しろ」と切られた。
 ここまでは確かに、元ブラ坊の不徳の致すところ、としか言いようがないと思うわけです。
 彼の罪または過失は三つ

1.ブラック師匠の耳に入るような場所で原告のプライバシーに関わる発言をした。
2.YouTube配信動画の適切な編集が出来なかった(実際の編集・配信はブラック師匠の指示の下、榎園京介氏が行っていると思われるが、その両名を説得できなかった)
3.原告を止められなかった。「落語家(しかも快楽亭一門)の彼女ないしは妻になる」ということについて、彼女に十分な説明・説得が出来なかった。

 以上です。それらによって起こると想定されることは、それぞれ

1.ブラック師匠が知り得た以上、高座でいじられるのは当然の帰結である。
2.動画の高座映像ではなく「解説映像」さえ削除できなかったため、原告に対する名誉棄損が歴然となった。
3.噺家であれば身内で処理するべき内容を師匠にまで持ち込んだため、原告・被告の関係性を悪化させた。

 ただし、原告と元ブラ坊の間ではすでに示談成立済みと聞きます(詳細な内容は不明)

 で、だ。
 そういう
イ.元ブラ坊の失態があったといえども、
ロ.また「芸人の世界で師匠を弟子(の交際相手)を訴えるなど言語道断」という考えがあったとしてもですよ、

 イ.については原告と元ブラ坊の間で解決済み
 ロ.はイデオロギーの問題であり、法的根拠を持たない。

 という以上、結果として快楽亭ブラック師匠の敗訴は既に確定している、と私は見ています。

 芸人の世界に通じている某氏から「師匠が元弟子に屈服するなどあり得ない」という意見を頂いたものの、法律の俎上に載せられた時点で、それは「感情」や「慣例」に過ぎない、効力の極めて弱い発言にしかならないでしょう。

 なので、ブラック師匠敗訴の前提でいます。で、初公判前日に、ブラック師匠へ以下のようなメッセージを送りました。

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(前略)
ところで、明日からの件ですが「芸人が舞台で喋ったことが名誉棄損の対象になり得る、という『判例』」が出来れば、師匠個人の問題ではなく、落語界全体にとって悪い結果しか生みません。
(後略)
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 師匠から返信を頂いたが、私の真意は理解して頂けなかったようで。
 というか、この件について「業界の常識であっても、法の下では通用しない」と師匠に諫言したところ、師匠は私を「敵方(原告側の人間)」と思い込んでおられるらしく、以降ほとんど連絡は取っておらず、私の「常識的な意見」など黙殺にしか値しない、という事か、と残念な気持ちになった訳です。

 そんなこんなで、私の立場は、

A.法律的には原告(ブラ坊の彼女)が正しい。
B.証言や証拠品の提出に関しては、可能な限り原告・被告双方に協力する。

 という「中立」を保ちたいと思っています。


 快楽亭ブラックファンの間では「元・ブラ坊が一方的に悪い」という事になっているようですが、法に照らすとそうではない。
 個人的には、こういった問題を示談にせず法廷にまで持って行ったブラック師匠の罪の方が重いように感じます(前出メッセージの通り)

 ただ、いずれの肩を持つわけでもない。ブラック師匠が気合を入れた高座はすごく良いし、そこに対する敬意は大きい。
 しかし私は「快楽亭ブラック信者」ではない。師匠が言うことを盲目的に全て是とはしない。

 飛躍するけれども、この件は「国家権力による言論統制」につながる一本の細い糸だと思っている。
 そしてそこに深い懸念を抱いてはいる。
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