列車に乗った男![]() | 髪結いの亭主![]() |
・3年前に買ったまま開封もせずに置いてあったパトリス・ルコント監督「列車に乗った男」を見る。
・映画としてはどうだろう、結末は途中から予想できるし、大したドラマもユーモアもない。
・見なくても良い映画かなあ、と思うね。
・僕が見たルコント作品は、
「仕立て屋の恋」
「髪結いの亭主」
「大喝采」
「フェリックスとローラ」
「歓楽街」
「列車に乗った男」
・こんなところ。「列車に乗った男」は「フェリックスとローラ」に似てるかな。ああいう、少し寒々しい感じ。
・この中で一番好きなのは何と言っても「髪結いの亭主」で、もうあの映画はね、全編快楽。
・温度、湿度、肌触り、香り、色、すべてが心地よいというようなお話です。
・「バラ色の人生」という言葉がありますが、薔薇色って何色ですかね。多くの人は赤だと思うんでしょうが、僕の中での薔薇色っていうのは、黄みがかったピンクですね、あわくて暖かみがあって甘い、ああいう薔薇の色。
・「髪結いの亭主」は、実に「バラ色」の映画です
・話は戻って「列車に乗った男」はバラ色じゃないですね、青の映画ですね。
・まず冒頭、黄昏時の町を歩く男。この夕暮れの青が素晴らしいね、通りの宝石店のシャッターがゆっくりと降りる、青くかげる町、この色彩がすごい。
・この映画、ストーリーにはあまり感心しなかったけれど、フランスの小さな町の写し方、特に白い壁の撮り方は秀逸だった。
・ああそうそうやっぱりこの映画は青の映画だと思うのが、町にやってくる男、この男の目が青い。やたらに青い目、シベリアン・ハスキーみたいな、いやもっと青いか、トルコ石みたいな色。世の中にはこんな色の目を持った人がいるのか、と僕は感心してしまいました。
・この人の青い目というのが実に孤独な感じなのですね、この人の目が茶色だったら映画が成立しなかったんじゃないか、と思えるほど、不思議な目の色だった。
・ラストシーンは結構好きだった。陳腐と言えば陳腐だけど。というかこの映画自体、全体的に非常にありふれた題材を扱った映画で、古典というか定型化した話なわけですよ。だから特に薦めにくいんだけど、ルコント映画が持つ寂しさとか、ああいうものが好きなら気に入るんじゃないですかね。
・あとやっぱりルコントにはゲイの気があるんだろうなあ、とか思いました。
「仕立て屋の恋」は見たけれど内容はほとんど覚えていないんです。ただストーカーの映画というか、いかにも童貞をこじらせた映画というか、そういう印象があって、後味も悪かった気はするんですね。
しかしそれでいてすごく共感した、という記憶もあるのです。ルコントというのは、僕にとってそういう監督です。