一応立場をはっきりさせておきます。
(結論だけ知りたい方は下の方へスクロールをどうぞ)
私はもう10年来の快楽亭ブラック師匠(現在は「被告福田」という芸名で活動)ファンです。その破天荒な生き方にも魅力を感じましたし、何より古典しかも人情噺に関しては相当の力量を持った噺家だと見込んで、大須演芸場に通っていました。
付け加えると、芸歴が長いだけあって顔が広く、落語会のプロデュース能力がすごい。師匠の会で見られた芸人と言えば、月亭可朝師匠、立川左談次師匠、桂雀三郎師匠、立川談之介師匠、鈴々舎馬るこ師匠、それにテントさん、元気いいぞうさん、鳥肌実氏、大本営八俵さん、坂本頼光先生
すでに鬼籍に入られた方も居ますが、素晴らしい芸に接することが出来たのはブラック師匠の人脈のお蔭だと思っています。
亡くなった月亭可朝師匠の高座を見た人ってどれくらいいるんでしょうか?最初は下世話な話から入りながらも、落語自体は洗練されつくし、枯淡の極みといった風情でした。
というわけで、ブラック師匠の芸に関しては相当リスペクトしています。先日聴いた「牡丹燈籠・栗橋宿」も良かった。本人評価はまだまだ、という事でしたが、私は素直に良い高座だと感じました。
こっから本題
今回、ブラック師匠が名誉棄損およびそれに基づく損害賠償の罪で訴えられました。
原告は元弟子(現在は廃業)快楽亭ブラ坊の交際相手(彼女)です。巷では「元弟子が師匠を訴えた」という言説が飛び交っていますが、そうではなく、一般人が芸人を相手取って訴訟を提起した、ということになります。
経緯は要約すると「快楽亭ブラック師匠が、YouTube配信している高座の中で、ブラ坊の彼女について性的な侮辱発言をした」という事です。その内容は、クローズドな場所で、ブラ坊自身が某女性芸人に漏らした一言ですが、ブラック師匠がそれを不特定多数に対して喧伝したことが訴訟の発端です。
ここからは私の推測ですが、YouTubeを見ていたブラ坊の彼女(原告)が、ブラ坊自身に詰問、彼は謝罪したが、原告は特定少数しか知り得ない侮辱的発言をYouTube(無料配信)上で不特定多数が閲覧可能な状態にしたブラック師匠にも直接謝罪を求めた。恐らくブラ坊は止めたと思うんです。が、原告を止められなかった。そこでブラ坊からブラック師匠に電話をしたところ「俺は関係ねえ、そっちで処理しろ」と切られた。
ここまでは確かに、元ブラ坊の不徳の致すところ、としか言いようがないと思うわけです。
彼の罪または過失は三つ
1.ブラック師匠の耳に入るような場所で原告のプライバシーに関わる発言をした。
2.YouTube配信動画の適切な編集が出来なかった(実際の編集・配信はブラック師匠の指示の下、榎園京介氏が行っていると思われるが、その両名を説得できなかった)
3.原告を止められなかった。「落語家(しかも快楽亭一門)の彼女ないしは妻になる」ということについて、彼女に十分な説明・説得が出来なかった。
以上です。それらによって起こると想定されることは、それぞれ
1.ブラック師匠が知り得た以上、高座でいじられるのは当然の帰結である。
2.動画の高座映像ではなく「解説映像」さえ削除できなかったため、原告に対する名誉棄損が歴然となった。
3.噺家であれば身内で処理するべき内容を師匠にまで持ち込んだため、原告・被告の関係性を悪化させた。
ただし、原告と元ブラ坊の間ではすでに示談成立済みと聞きます(詳細な内容は不明)
で、だ。
そういう
イ.元ブラ坊の失態があったといえども、
ロ.また「芸人の世界で師匠を弟子(の交際相手)を訴えるなど言語道断」という考えがあったとしてもですよ、
イ.については原告と元ブラ坊の間で解決済み
ロ.はイデオロギーの問題であり、法的根拠を持たない。
という以上、結果として快楽亭ブラック師匠の敗訴は既に確定している、と私は見ています。
芸人の世界に通じている某氏から「師匠が元弟子に屈服するなどあり得ない」という意見を頂いたものの、法律の俎上に載せられた時点で、それは「感情」や「慣例」に過ぎない、効力の極めて弱い発言にしかならないでしょう。
なので、ブラック師匠敗訴の前提でいます。で、初公判前日に、ブラック師匠へ以下のようなメッセージを送りました。
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(前略)
ところで、明日からの件ですが「芸人が舞台で喋ったことが名誉棄損の対象になり得る、という『判例』」が出来れば、師匠個人の問題ではなく、落語界全体にとって悪い結果しか生みません。
(後略)
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師匠から返信を頂いたが、私の真意は理解して頂けなかったようで。
というか、この件について「業界の常識であっても、法の下では通用しない」と師匠に諫言したところ、師匠は私を「敵方(原告側の人間)」と思い込んでおられるらしく、以降ほとんど連絡は取っておらず、私の「常識的な意見」など黙殺にしか値しない、という事か、と残念な気持ちになった訳です。
そんなこんなで、私の立場は、
A.法律的には原告(ブラ坊の彼女)が正しい。
B.証言や証拠品の提出に関しては、可能な限り原告・被告双方に協力する。
という「中立」を保ちたいと思っています。
快楽亭ブラックファンの間では「元・ブラ坊が一方的に悪い」という事になっているようですが、法に照らすとそうではない。
個人的には、こういった問題を示談にせず法廷にまで持って行ったブラック師匠の罪の方が重いように感じます(前出メッセージの通り)
ただ、いずれの肩を持つわけでもない。ブラック師匠が気合を入れた高座はすごく良いし、そこに対する敬意は大きい。
しかし私は「快楽亭ブラック信者」ではない。師匠が言うことを盲目的に全て是とはしない。
飛躍するけれども、この件は「国家権力による言論統制」につながる一本の細い糸だと思っている。
そしてそこに深い懸念を抱いてはいる。
2020年12月16日
2019年01月31日
劇団柿喰う客「美少年」感想
・劇団・柿喰う客の「美少年」を見た。・出演は4人の役者(男)のみ。セットなし。衣装は4人一緒で衣装変えもなし
・この劇団は開幕時に「このお芝居は○○分です」と宣言するのが良い。今回は60分、短い!
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2018年12月31日
ハイバイ「ヒッキー・ソトニデテミターノ」DVD
ここ数年で最も心を奪われた芝居。DVDで見ても泣ける。Amazon等では取り扱いがないので困るのだけど、送料込み3,500円と手軽なので是非
「ヒッキー・ソトニデテミターノ」
http://hi-bye.net/products/dvd24
引きこもりを題材にした新劇で、最初は重いけれど徐々にコメディータッチに。
人によって、また鑑賞のたびに色々な泣きスイッチが仕掛けられているのも罠
岩井秀人と言えばテレビ「大川端探偵社」でエリートサラリーマンを好演。というかあれもボロ泣き回だった。
私が書いた当時の感想はこちら→ハイバイ「ヒッキー・ソトニデテミターノ」感想
※DVDの品質について、画質はあまり良くない(感度の高いモードで撮影しているからか、特に暗い箇所のざらつきが目立つ)けれど、音声はちゃんと録音できている(特に廉価版の舞台収録DVDでは音声の録音状態が最悪というケースが多いが、このパッケージでは特に問題なくセリフが聞き取れる)
2018年12月10日
12/8-9日記(すし屋・辻留・京都御所・朝食喜心)
■12/8・京都祇園「白碗竹カイ樓(バイワンジュウカイロウ、Google翻訳によると「白いお椀と竹の箸」という意味のよう)」で昼食。際コーポレーションの店ということで不安だったが、まあまあ美味しい。ただ昼のコース3,800円は高いし、厨房に全く緊張感が無い店なので今後に期待は持てない。例えばオーダーはフロア担当が復唱して、カウンター内の料理人が全員で「はい」と応えるのだが、その上で間違えたものが出てくるというのはどういう事なんだろう。だったら復唱なんか無駄なのでやめれば良いのだ。売りにしているふかひれも、驚くほどのものではなし。
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2018年12月06日
何年かぶりでM-1グランプリを純粋に楽しめた。
・今年のM-1は面白かった。・審査員については色々言われているけど、大御所(男女2名)、上方漫才/東日本の漫才(それぞれオーソドックス派と、どちらかと言えば前衛派各1名)、ジャンル外(落語立川流)と比較的バランスの取れた構成だったと思う。
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2018年12月03日
えびそば・グラントリノ・ミシマ・ソウル市民
・海老そばを作った。1.使ったのは冷凍むきえび。室温で解凍した後、酒と少しだけの醤油をかけ、片栗粉をまぶしておく(解凍した後、酒と醤油を振って軽く混ぜてから、解凍時に出た水分と一緒に2.の鍋に入れ、その後に片栗粉をまぶした方が正解かも)
2.500ml(二人分)のお湯を沸かし、中華スープの素スープ1杯分+ほたて貝柱スープの素スープ1杯分、都合スープ2杯分、それに葱油を入れる。
3.お湯が沸いたら1.を入れて軽く茹で、海老をすくいだして葱と混ぜておく(葱は市販のきざみねぎを使用)
4.麺(細麺)を茹で、ゆであがったら沸かしておいたスープをかけて3.の具をのせる。
・冷凍海老、スープの素、市販のねぎを使う手抜き料理だが、これがそれなりの味になってしまう。海老を茹でたお湯をスープに使う事がポイントだと思う。あとスープの素については、帆立の方の比重を多めにした方が良いような気がする。
・手に入れば、くわいの水煮缶詰なんかを入れても良いかもしれない。
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2018年04月18日
2018年03月26日
ハイバイ「ヒッキー・ソトニデテミターノ」感想
2018年01月31日
2017年12月22日
ナイロン100℃「ちょっと待って下さい」感想と記録および大航海時代2
・ナイロン100℃「ちょっと待ってください」を見た。ケラ自身による解説にもある通り、過去の不条理コメディへのオマージュというか、パッチワークのような芝居。ナイロンの芝居は初見だが印象としては「シティボーイズ公演の、それほど面白くない部分が延々続く感じ」だろうか。続きを読む
2017年11月08日
長いぞ東京5泊6日日記(歌舞伎座昼夜と食いだおれ記録)
■11/2・往路、町山智浩「ブレードランナーの未来世紀」ほぼ読了。ビデオドローム、ブルーベルベット、ロボコップ、未来世紀ブラジル、ブレードランナーというタイトルが並べば買わざるを得ないが、買ってまで読む本か微妙。しかし買わなきゃよかったとも思わず、まずます面白かった。
・BigHornでAM1:30頃まで飲むが〆を食べ損なったので人生初の日高屋でラーメン
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2017年10月10日
国立劇場「霊験亀山鉾」を見に行ってついでに色々食べた話
■10/6・田舎を脱出。移動中は荒俣宏ほか「ニッポン見聞録 東北編」を読む。東京駅からすぐのKITTE内にある東京大学収蔵品展示室「インターメディアテク」の存在を知る。
・門前仲町BigHornに飲む。
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2017年08月17日
8/11-14日記(歌舞伎座「野田版・桜の森の満開の下」感想など)
■8/11・午後、門前仲町に到着。フレッシュネスバーガーでビールとオニオンリング。ホテルで少し休んで、てんやで底を入れる。めごちがあったので頼んでみるが、水っぽくてさすがにうまくない。
・しかし今日は祝日なのでいつも行くバー(BigHorn)が休み。これは誤算だった。門仲のオーセンティックバー代表格であるオーパも休み。仕方なく放浪していて、SORAYAというバーを見つける。いかにもお洒落な感じで、昼間はカフェをやっているそうだ。そういえばここは以前、アンティークの雑貨屋かなんかだったか。同僚と待ち合わせ、三軒飲み歩く。ガールズバーというのに初めて入ったが、あれは何が面白いのかね。
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2016年12月07日
芝居の感想(くだんの件、第七舞台、柿喰う客)
・「世間の評判」というのがあって、通常はその「世間」が広がれば広がるほど、どういうわけかアテにならなくなるものです。衆愚化と言うんですかね。しかしまあ信用度ゼロというわけではない。ある程度参考にはなる。続きを読む
2016年11月14日
2016年06月29日
6/24-27日記(碇知盛・鮨屋・小笹寿し・まんてん鮨)
■6/24・門前仲町BigHornで海老とレモンとパクチーのピザ。2時過ぎまで飲む。
■6/25
・朝食後、歌舞伎座へ。まずは渡海屋・大物浦。いわゆる「イカリ知盛」として知られる定番の演目だが、たぶん初めて見る。渡海屋の旦那実ハ平知盛が染五郎。北前船の貿易商という設定で、アイヌの民族衣装柄の着物で登場する。
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2016年05月24日
ハイバイ「おとこたち」を見た感想
・ハイバイという劇団の「おとこたち」という芝居を見た。・あらすじについてはここのブログに詳しい→「おとこたち」を見る: 芝居遊歴控
・4人の「おとこたち」の青年期から老年期までを描いた話。コメディーかと思うと結構シリアスな話だった。山田(狂言回しの男)、津川(アル中の男)、鈴木(計画的な男)、森田(不倫する男)という四人
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2016年04月25日
歌舞伎座「不知火検校」感想(今更12月国立・1月浅草の感想も)
・歌舞伎座で「不知火検校」を見た。・まず最初に染五郎の「操り三番叟」ここ数年で、翫雀、右近、猿弥の操り三番叟を見たが、染五郎のはその中で最低の出来だった。踊りのことは良く分からないけど、少なくとも操り人形が踊っているようには見えない。舞台上では、ただ染五郎が楽しそうに踊っているだけだ。この人、スター性が強すぎて「人格を消して人形になる」ってことが出来ないのではないか。
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2016年02月15日
演劇「国道・業火・背高泡立草」の感想
・烏丸ストロークロック「国道・業火・背高泡立草」を見た。歌舞伎ばかり見ていたので、現代劇の方に少しシフトしようと思ったためだ。・うちの奥さんは「見て、イヤな気分になった」と言っていたが、イヤな気分にするための芝居なので、まあ正当な評価かと思う。
・以下、いわゆる「ネタバレ」を含む記述になる。
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2015年08月31日
下鴨車窓「漂着」感想
最近は歌舞伎ばかり見ているので、気分を変えて現代劇も見ようと思い、昨年「木馬の鼻」を見に行ったり今年は「戯作者銘々伝」や、新演出の「マクベス」を見に行ったりした。マクベスを見て気づいたのは「現代劇というのは、答えのない芝居なんだなあ」ということで、答えや結末ではなく「示唆」を提供するのが現代劇というか、いやこれは欧米的と言うべきなのだろうか、よく分からないんだけど歌舞伎と違うなあと思った。続きを読む